Rita Nazareth
- ドル指数は8営業日続伸、FOMC議事要旨の発表後に上昇維持
- 9月CPIは前月比0.1%上昇と3カ月で最小の伸び予想
9日の米株式市場は上昇。S&P500種株価指数は5800の大台に接近し、今年44回目の過去最高値更新となった。市場の関心は10日発表の9月消費者物価指数(CPI)に移っている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5792.04 | 40.91 | 0.71% |
ダウ工業株30種平均 | 42512.00 | 431.63 | 1.03% |
ナスダック総合指数 | 18291.62 | 108.70 | 0.60% |
業種別では、テクノロジーがこの日も相場を主導した。アップルは1.7%上昇。前日まで5営業日続伸していた半導体のエヌビディアは小反落。「ロボタクシー」発表イベントを控えるテスラは1.4%安で引けた。
大型テクノロジー銘柄はこのところ上下両方向でボラティリティーに見舞われているが、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルチェリ最高投資責任者(CIO)は、株価下落時は魅力的な買い場になると指摘。「われわれはテクノロジーセクターと人工知能(AI)の見通しに依然として楽観的だ。AIへの長期的なエクスポージャーを構築するためにボラティリティーを活用すべきだと考える」と述べた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月17-18日に開いた会合の議事要旨が発表されたが、市場の反応は限定的。議事要旨では、0.5ポイント利下げを推進したパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が抵抗に遭い、一部の当局者は0.25ポイントの方が好ましいとの考えを示していたことが明らかになった。
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トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「FOMC議事要旨はかなり『退屈』とも言える内容であり、それは株式投資家にとって実際は好材料かもしれない」と語った。
米国のインフレは7-9月(第3四半期)の終わりに鈍化した公算が大きく、労働市場に重点を移しつつあるFRBには安心材料となりそうだ。
10日発表の9月CPIは前月比0.1%上昇と、3カ月で最小の伸びと予想されている。前年同月比では2.3%上昇の見込みで、6カ月連続で伸びが鈍化し、2021年初頭以来最も緩やかな上昇となる見通し。
フォレックス・ドット・コムのマシュー・ウェラー氏は「米金融当局の焦点がインフレから労働市場に移っていることは、明日のCPIを含めインフレ関連のデータはこれまでに比べて相場を動かす要因にはなりにくいことを意味する」と指摘。「それでも、4日発表の雇用統計が目を見張る内容だっただけに、それに続く今回のCPI統計は市場のボラティリティーを招く可能性がある」と述べた。
米株式市場は強気相場入りして丸2年を今月12日に迎えるが、ここ数年の大半の株高局面では裾野の広がりを欠いていた。次の上昇局面は、物色の裾野拡大が後押しする可能性がある。
ネッド・デービス・リサーチの主任米国ストラテジスト、エド・クリスソールド氏によれば、強気相場の3年目では大型株と成長株が歴史的にアウトパフォームしてきたが、現在それらの株は小型株やバリュー株と比較して割高となっている。
強気相場が継続するためには、インフレの沈静化が続き、経済がソフトランディングを成し遂げ、米企業の利益成長が強さを維持しつつ広がっていくことが必要だと同氏は述べた。
国債
米国債相場は下落。10年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.34% | 4.9 | 1.14% |
米10年債利回り | 4.07% | 6.1 | 1.51% |
米2年債利回り | 4.02% | 6.3 | 1.60% |
米東部時間 | 16時51分 |
22Vリサーチが実施した調査によれば、投資家の42%はCPI統計に対する市場の反応が「反応薄・まちまち」になると予想。「リスクオフ」の予想は32%で、「リスクオン」はわずか25%だった。
同社創業者のデニス・デブシェール氏は「インフレについては全般的に楽観的な見方がある」と指摘。リセッション(景気後退)を予想する投資家の割合は低下している一方、金融環境を引き締める必要があると考える人の割合は6月以来の高水準に増えたと述べた。
為替
外国為替市場では、この日もドル買いが継続。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は8営業日続伸した。主要10通貨では円の下落が目立つ。
FOMC議事要旨で0.5ポイント利下げへの反対意見があったと明らかになった後、ドルは上昇を維持。ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「9月の0.5ポイント利下げは、7月に据え置いた分を若干取り戻す動きだったと考える多くの意見と一致する」と語った。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1244.41 | 5.09 | 0.41% |
ドル/円 | ¥149.31 | ¥1.11 | 0.75% |
ユーロ/ドル | $1.0941 | -$0.0039 | -0.36% |
米東部時間 | 16時51分 |
一方でRBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は、米大統領選で候補2人がインフレを加速させるような政策を掲げていることから、米金融当局が来年利上げを余儀なくされるリスクがあると指摘した。
関連記事:トランプ氏とハリス氏の政策で米利上げのリスク-RBCブルーベイ
円相場は、節目の水準として意識される1ドル=150円に接近しつつある。
ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は「ドル・円相場は150円に向かってじわじわ上昇しており、現在は金利差から推測される『適正価値』水準を上回っている」と指摘。「150円を超えて一段と大幅に上昇する可能性は限定的との見解に変わりはない」とリポートに記した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続落。もみ合う場面が目立ったが、総じて売りが優勢になった。中国の財政政策にも注目が集まった。
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米エネルギー省の在庫統計が発表されると、原油相場はこの日の安値から下げ渋った。先週分の米原油在庫は581万バレル増加したが、8日に発表された米国石油協会(API)推計の1100万バレルほど増加しなかった。
中東情勢の緊迫が続いていることも相場を下支えした。最新の報道では、イランがイスラエルに数千発のミサイルを発射する用意があり、攻撃された場合は経済拠点を標的にするという。
それでも、世界最大の原油輸入国である中国の需要は、投資家にとって依然として大きな懸念材料であり、市場関係者の間では来年の供給過剰を予想する声が強まっている。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「現在の地政学的な状況を考えると、70ドル台前半で原油のショートポジションを積み増したいとは誰も思わないだろう」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物11月限は33セント(0.4%)安の1バレル=73.24ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.8%安の76.58ドルで引けた。
金
金スポット相場は6日続落。米金融当局者の発言を受け、利下げが従来考えられていたほど積極的なものにはならないとの見方が強まり、売りが続いた。
ダラス連銀のローガン総裁は、政策金利を約20年ぶり高水準から引き下げるにあたり、より緩やかなペースでの利下げを支持していると述べた。
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スポット価格はニューヨーク時間午後3時44分現在、0.5%安の1オンス=2608.64ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は9.40ドル(0.4%)安の2626ドルで引けた。
原題:S&P 500 Hits Record High in Run-Up to CPI Report: Markets Wrap
S&P 500 Is on Track for All-Time High Before CPI: Markets Wrap
Dollar Keeps Gains Post Minutes; Kiwi and Yen Lag: Inside G-10
Oil Steadies as US Stockpiles Swell, Traders Weigh China Policy
Gold Falls for Sixth Day as Rate Cut Bets Get Less Aggressive(抜粋)