日本銀行の植田和男総裁は、経済データが日銀の想定通りに推移していることで追加利上げのタイミングが近づいているとした上で、国内賃金と米国経済の動向を見極めたいとの見解を示した。日本経済新聞が30日、インタビューでの発言を電子版で報じた。
植田総裁は28日に行われたインタビューで、追加利上げの時期について「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいているといえる」と述べた。その上で、トランプ次期大統領の政策を含めて米経済の先行きを見極めたいとし、拙速な利上げは避ける考えを強調したと、日経は伝えた。
日銀は経済・物価が見通しに沿って推移すれば利上げを続ける方針を示している。植田総裁は12月の金融政策決定会合における政策変更の有無に関しては明確な考えを示さなかったものの、市場で広がる早期の追加利上げ観測を追認した格好だ。
ニューヨーク時間29日の外国為替市場では、総裁の発言が伝わった直後に円が対ドルで上げ幅を拡大し、149円90銭台を付けた。いったん150円台に戻した後、上げ幅をさらに拡大して10月21日以来の高値となる149円47銭まで円高が進んだ。
29日には11月の東京都区部消費者物価が市場予想を上回る強めの結果となり、追加利上げを後押しするとの見方から円が上昇。心理的節目の1ドル=150円を突破していた。
総裁は、利上げ判断の重要な要素である賃上げについて、「25年の春季労使交渉(春闘)がどういうモメンタム(勢い)になるか。それはみたい」と指摘。為替に関しては、一段の円安になればリスクが大きいとし、場合によっては対応が必要になるとの認識を示した。
日銀の金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS) 市場で、12月会合で政策金利(0.25%程度)を引き上げる確率は足元で約66%。今月初めは30%程度だった。10月会合前にブルームバーグが実施したエコノミスト調査では12月の利上げを53%が予想。来年1月の32%と合わせると85%に達していた。
植田総裁は18日の講演と記者会見で、これまでの経済・物価情勢は想定通りとの認識を示す一方、米国をはじめとした海外経済や金融市場の動向など見通しを巡る不確実性の大きさも指摘。21日には12月会合前には非常に多くのデータや情報が得られるため、現時点で会合結果を予測するのは「不可能だ」と述べていた。
7月会合での利上げはサプライズと受け止められて市場が乱高下する一因になり、植田総裁は市場との対話を一段と丁寧に行う考えを表明していた。同会合前には政策委員の講演や記者会見など日銀から目立った情報発信はなかった。12月会合を控えたタイミングでの総裁発言を、市場は対話強化の一環と受け止める可能性がある。
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