補正予算の採決を前に自民と公明に国民民主を加えた3党幹事長が合意文書を取りまとめた。政治とは何か、政策とは何か、日本の政治の“いまを改めて問い直す内容になっている。これによって国民民主は補正予算に賛成すると表明、3党それぞれのメンツは保たれた。加えて、野党第1党である立憲民主の提案を受け、補正予算の修正まで行なっている。まさに与党が過半数割れした中で生まれた見事なバランス。与野党それぞれの思惑が異なる中で、最大公約数だけを表現した中身だ。だがこれによって政治が進歩したわけでも、進化したわけでもない。政策論議の欠陥を覆い隠し、超目先的な必要性、要するに能登半島復興に向けた予算を確保するための、極めて政治的な妥協の産物でしかない。とはいえ、妥協することが政治の本質だとすれば、これはこれで高度な政治判断と言っていいだろう。裏を返せば政治はこれまで有効な政策を何ら打ち出してこなかった。「手取りを増やす」政策論議はこれから始まる。
合意文書は「年収103万円の壁」の見直しの実現に向けた控除額について「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」としていること。ポイントは「目指す」だ。さらに、ガソリン税の暫定税率(トリガー条項)については、時期は示していないが「廃止する」と明記した。国民民主の榛葉幹事長はこれを受けて「補正予算に賛成する」と表明した。一方の自民党・森山幹事長は「1年でやれるわけではないので、税制調査会を中心に誠意を持って協議していく」と述べている。榛葉幹事長も承知の上だろう。「補正予算に反対せざるを得ない」と大上段に振りかぶって交渉に臨んできた国民民主党にとっても、今回の合意は渡りに船だろう。自民党の不誠実な対応を盾に交渉から退席すれば、国民の手取りを増やすとの公約の実現が遠のく。対立した意見の落とし所を見つける、今回の合意は長年国対委員長を務め野党の手の内を熟知している森山幹事長の手腕というべきか。
突然の合意に自民党税調会長の宮沢氏は「釈然としない」と憮然とする。だが幹事長の権力に逆らえるわけもない。というより、具体策は引き続き税調会長の手の中にある。何も変わっていないのだ。年金も絡むため政調会長も今後の交渉に参加するだろう。ガソリンの暫定税率が創設されたのは1955年だ。一時的な税金が今日まで生き残っている。政府・自民党はこの間何もしてこなかった。言葉は悪いが国民の生活など歯牙にもかけてこなかったということだ。国民民主党が先の総選挙で公約した「手取りを増やす」との主張は、日本政治の“死角”をグリグリと抉り出した。ひとことで言ってしまえば日本の政治は、時代の変化に対応できていないのだ。与野党を含め政治家の怠慢でもある。政治家だけではない。官僚も学者もエコノミストもメディアも、実態を無視した空理空論に終始してきた。国民民主党と共に目覚めた国民、日本再生はまさにこれから始まりそうな気がする。
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