▽米大統領は日本との関税交渉最優先の意向、為替協議せず-赤沢再生相

小田翔子、梅川崇、照喜納明美

  • 「可能な限り早期の合意」目指す、月内の次回閣僚協議開催で調整
  • 次につながる協議行われた、最も適切な時期に訪米する-石破首相

訪米中の赤沢亮正経済再生担当相は16日(日本時間17日)、米側から関税交渉について日本との協議を最優先に進める意向を示されたことを明らかにした。今月中に閣僚級の次回協議が行われるよう日程調整する。

  米国の関税措置を受けたトランプ大統領との面会、ベッセント財務長官らとの協議後、日本大使館で記者団に語った。為替は議題に上らなかったという。

  赤沢氏からは「日米双方の経済が強くなるような包括的な合意を可能な限り早期に実現したい」との考えを米国側に伝えた。これに対し、トランプ氏から日本との関税協議が最優先との発言があったことを紹介し、同氏から何か強く要望されたことはないと語った。米側は90日間でディールを成立させたい考えだと理解しているとも述べた。

Japan's Economic Revitalization Minister meets US President Trum
日米関税協議の初会合後、会見に臨んだ赤沢再生相Photographer: Keichi Nakane/The Yomiuri Shimbun/AP Images

  その上で、両国間で協議を続けていくことを確認。日本側から米国による一連の関税措置は極めて遺憾だとし、日本の産業や日米両国における投資雇用の拡大に与える影響などについての考えを説明し、見直しを申し入れた。

  この日は、今月中に閣僚レベルで次回協議を行う方向で調整するほか、1)双方が率直かつ建設的な姿勢で協議に臨み、可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指す、2)事務レベルでの協議も継続するーの三点について合意したという。外務省担当者によると大統領との面会は約50分間、閣僚協議は約75分間行われた。

  赤沢氏の訪米は7日の日米首脳電話会談から10日足らずで実現した。主要国の中でも早いタイミングでの閣僚間の協議開始で、今後交渉に臨む国にとって米側の出方や戦術を見定めるための試金石となり得る。赤沢氏が妥結への道筋を付け、早期の日米首脳会談にこぎつけられるか、手腕が問われる。

  石破茂首相は17日、赤沢氏の訪米について「次につながる協議が行われたと認識し、これを評価する」と述べた。今後、閣僚級協議の推移を見ながら「最も適切な時期に訪米し、トランプ大統領と直接会談するということを当然考えている」と記者団に語った。具体的な日程は未定だとした。

為替は財務相間で議論

  今回の協議で通貨政策が議題に上ったのかとの質問に対しては「為替については出ませんでした」と述べるにとどめた。為替については2月の日米首脳会談で合意されたように、日米財務相間で議論するという「仕組みがもうできているということはある」との見解を示した。

  為替は経済のファンダメンタルズを反映し決まってくるとした上で、「円安誘導をやった覚えがない。今、確立されている枠組みの中で今後も進む」とも語った。

  加藤勝信財務相は来週ワシントンで開催される世界銀行・国際通貨基金(IMF)の春季会合に出席する方向で調整しており、滞在中にベッセント氏との会談にも意欲を示している。

  赤沢氏の発言を受けて、為替市場ではドル買い円売りが強まり、対ドルで1ドル=142円台半ばまで反落。朝方には141円62銭と昨年9月以来の高値を付けていた。 債券先物は下落。株式は日経平均株価が小幅に上昇している。

トランプ氏は防衛分野の交渉も示唆

  トランプ氏は赤沢氏との会談後、日本の代表団との間で「大きな進展」があったと自身のSNS(交流サイト)に投稿した。日本の代表団と貿易問題を巡り会談できて非常に光栄だとしている。自身のソーシャルメディア・プラットホーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で表明した。

関連記事:トランプ米大統領、日本の代表団との間で「大きな進展」-SNS投稿

  会談前には関税、軍事支援の費用、「貿易の公平性」について日本と交渉するための会合に自分も出席するとしていた。トランプ氏は「うまくいけば、日本と米国にとって良い(素晴らしい!)結果が得られるだろう!」と記した。 

  一連の投稿は防衛・安全保障分野も日本との協議対象とするトランプ氏の考えを示唆している。共同通信は日米交渉の際にトランプ氏から日本の防衛面での負担増に関する発言があったと日本政府関係者の情報を基に報じたが、赤沢氏は防衛に限らず、具体的に協議した分野を明らかにしていない。

  林芳正官房長官も17日午前の記者会見で、トランプ氏の投稿を受けて防衛や安全保障分野で米側からどのような要望があったか問われたが、「議論の詳細については外交上のやり取りであり、言及は差し控える」と述べるにとどめた。

赤沢氏の他の発言

  • 全部がまとまって初めてパッケージとして確立-日米交渉
  • 投機的動きあれば何か行動することあった-為替
  • 日本側の要望を米国は理解していると思っている
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