目まぐるしいトランプ大統領の発言の数々、それでも定まらない演目。ただの混乱か、壮大な革命の序曲か。何もわからないまま事態が進行している。今朝の大ニュースはパウエルF R B議長解任発言。本気か、戯言か、単なる当てつけか。専門家がさまざまな解説を試みているが、ストンと腹に収まるものはない。昨日、世界中が注目した日米交渉は成功だったのか、単なるセレモニーだったのか。それすら定かではない。オーケストラに例えれば、指揮者のトランプ氏が日本を第一バイオリンの奏者に指名した。名誉であり、誇らしいことは確かだが、オーケストラの内部では依然として不協和音が鳴り止まない。第一バイオリンに期待されているのは、音合わせをしながらオーケストラとしてのハーモニーを醸し出すことだ。重責に耐えられるのか、不安だけが増幅する。

そんな中でのF R B議長の解任発言。E C Bの6会合連続利下げを見て、頑なに動こうとしないパウエル議長への当てつけだろう。前日の会見で同議長は利下げを「急がない」と発言したうえで、「連邦政府の国内裁量支出削減で対処しようとする現在の方策は間違っている」とトランプ批判を口にした。要するにこれはイーロン・マスク氏率いるD O G E批判だ。さらに「政府債務と赤字の削減を真に進めるためには、政治家は政府支出の最も大きな部分を占める、低所得層向けの公的医療保険『メディケイド』や高齢者向け公的医療保険『メディケア』、高額の利払い費への支出などを削減しなければならない」と主張した。「これらは超党派でのみ取り組むべき問題だ」と語っている。あからさまな批判だ。これにカチンときたトランプ氏は、出来もしない解任劇を口にした。頭に来て不満を口にした。まとも付き合う必要もない気がする。

それ以上に気になるのは通貨政策だ、有り体に言えば「ドル高」か「ドル安」か、関税政策と並走する通貨政策はどの道を選ぶのだろうか。基軸通貨を維持しようとすればドル高が常識的。ベッセント財務長官は「ドル高維持」を公言している。利下げを強要するトランプ氏の発言はドル安を容認しているようにみえる。第一バイオリンに指名された日本。石破総理は先の首脳会談で「対米1兆ドル投資」を公約している。対米投資はドル買い・円売りだ。ドル高政策でもある。関税がトランプ氏の思惑通り実現すればインフレになる。金利が上がりドル高だ。一説には基軸通貨のドルを放棄し、暗号資産大国になるとの“珍説”もある。それで世界経済がどうなるのか、誰にもわからない。悪いことにドルに替わる基軸通貨も見当たらない。革命なから革命で良いのだが、演目も分からないままトランプ・シンフォニー、不協和音だけが鳴り響いている。