コメの値段はどうして下がらないのか。農業の実情を知らない一般国民や生活者にはなかなかわかりづらい問題だ。かくいう私もその一人。諸物価高騰の折、コメの生産コストが上昇しており、値段は下がらないのだろう。そう思っていた。そういう側面は確かにあるのだが、現実はもっと深刻な組織論に根ざしているようだ。減税を頑なに拒否する財務省の体質と一緒、農林水産省の組織的な劣化が諸悪の根源だ。早い話、農水省という組織が腐っているのだ。キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹である山下一仁氏の原稿を読んで、そんな印象を強くした。この人、かつて農水省にいた。タイトルは「米価高騰への抜本的な対策は減反廃止と農家への直接支払いの導入」。制度・規制改革学会(2025年2月28日)で発表したものだ。コメ問題の背景はかなり複雑で入り組んでいる。以下、山下氏の原稿を引用する。
山下氏はコメ問題には3つの誤解があるという。第1に、コメ不足と価格高騰の要因。農水省は、昨夏に民間在庫が8~9月の端境期を賄えない水準まで低下していたにもかかわらず、コメの不足を認めず、備蓄米の放出を拒否した。同省は9月に新米が出回れば米価は下がると主張したが、逆に米価は60キログラム当たり2万6千円(前年同月比69%増)と史上最高値をつける。これに対して同省は、「コメは十分あるのに、流通段階で誰かが投機目的で21万トンをため込んでいる」と主張、これまで調査しなかった小規模業者の在庫をこれから調査すると主張した。24年産米は本来24年の10月から25年の9月にかけて消費されるもの。昨夏40万トン不足したので、24産の新米を8~9月に先(早)食いした結果、24年産米が本来供給される時期の供給量は最初から40万トンなくなっていた。24年10月、11月、12月の民間在庫は、前年同月比でそれぞれ45万トン、44万トン、44万トン減少している。先食い分が埋め合わせられず供給量が減少して米価は上がっているのである。
何のことはない、農水省の判断ミス。これを隠蔽するため同省は「コメ不足ではない」と嘘をつく。一度嘘をつくと次から次と嘘を重ねることに。そして今度は民間業者が投機目的で溜め込んでいると、中小業者に責任を転嫁する。備蓄米の入札に追い込まれると、入札に参加する業者を全農系の大手集荷業者に制限する。挙げ句の果てに25年産米を同量買い戻す約束をしている。コメの値段が上がるのは仕方ない。許せないのは消費者を騙しながら価格を維持しようとしている農水省の姿勢だ。フジT Vは日枝氏の上意下達で組織が硬直化した。財務省は財政健全化という虚偽の幻想を振り撒きながら、組織防衛と省益追求に余念がない。腐った組織には必ず応援団が付きまとう。フジT Vには有名タレント、財務省には自民党と公明党。立憲民主と維新もこれに連なる。今朝の毎日新聞(Web版)に「『警視庁はフジテレビと同じ』浜田敬子さんが憂える日本型組織の病根」という記事が掲載されている。興味のある方はご一読を。