▽【米国市況】株反発、貿易交渉進展への期待で-ドル141円台半ば

Rheaa Rao

  • ドル・米国債にも一定の落ち着き戻る、弱い入札で2年債には売り
  • 原油は反発、金は3500ドルを初めて突破後に利益確定の動き

22日の米国株式市場は反発。「米国売り」が膨らんだ前日から大きく回復した。主要貿易相手国・地域との交渉が進展していると伝わり、関税を巡る対立が緩和に向かっているとの期待が高まった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5287.76129.562.51%
ダウ工業株30種平均39186.981016.572.66%
ナスダック総合指数16300.42429.522.71%

  S&P500種株価指数は2.5%上昇と、約2週間ぶりの大幅高。一時は3%近く値上がりした。ベッセント米財務長官が投資家との非公開の会合で、関税を巡る中国との対立は長くは続かず、緩和していく見通しだと述べたとするブルームバーグ報道に反応した。

  またホワイトハウスのレビット報道官は会見で、貿易交渉は進展しており、「対中協議も正しい方向に進んでいる」と発言。ニュースサイトのポリティコは、トランプ政権が日本およびインドとの貿易交渉で基本合意に近づいていると報じた。

  テスラは時間外取引で0.6%高。引け後に発表した1-3月(第1四半期)決算は、調整後1株利益が27セントで、アナリスト予想平均を下回った。また決算報告書で成長への回帰見通しを削除した。

  前日に続き、この日も商いは低調で、値動きが増幅された可能性がある。

  ノーザン・トラスト・アセット・マネジメントのグローバル資産配分部門最高投資責任者(CIO)、アンウィティ・バフグナ氏はブルームバーグテレビジョンに対し「不確実性が極めて高い局面にあり、日々の値動きに過度に反応すべきではない」と語った。

  クリアブリッジ・インベストメンツのジェフ・シュルツ氏は、短期的にはS&P500種が数週間前の安値水準から5400前後のレンジで推移するとの見方を示す。

  その上で「このレンジを抜け出す上で最大の要因は、米国がリセッション(景気後退)に陥るかどうかだ」と指摘。「ただ、長期的には足元の調整局面においてドルコスト平均法の投資を進める好機だと考えている。米国株には短期間に相当な悪材料が織り込まれた」と述べた。

  個別銘柄では、日用品・工業品メーカーの3Mが約8%上昇。貿易戦争に絡み新たなリスクに直面していると認めつつ、通期業績見通しを据え置いた。ボーイングは2%高。航空ナビゲーション部門と関連資産をトーマ・ブラボーに106億ドルで売却することで合意した

  中央銀行関係者の発言も相次いだ。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、インフレ率を2%へと戻す目標はほぼ達成したが、経済情勢は一段と不安定なため引き続き柔軟な姿勢でいる必要があるとの考えを示した。

  ジェファーソンFRB副議長は物価安定と雇用最大化という金融当局の目標が経済的モビリティー(移動性)の促進に役立つとの認識を示した。

  国際通貨基金(IMF)は同日発表した世界経済見通し(WEO)で、今年と来年の世界経済成長見通しを大幅に下方修正。とりわけ米国と中国の引き下げが顕著だった。また世界的な貿易戦争により、見通しはさらに悪化する恐れがあると警告した。 

  シティグループの株式取引戦略責任者スチュアート・カイザー氏は「欧州、インド、日本、韓国、オーストラリアなど、米国の主要貿易相手国・地域との通商交渉で前向きな成果がないか注目している」とブルームバーグテレビジョンで発言。「交渉で前向きな進展が見られると予想しており、そうなれば市場にも好材料だ」と述べた。

  インドを訪問しているバンス米副大統領は、両国の協力を強化する新時代を提唱。インドに対して貿易障壁の低減やエネルギーなど米国からの輸入拡大を求めた。ホワイトハウスは、バンス氏とモディ首相との会談で、2国間の貿易協定に向けて「著しい進展」があったとしている。 

為替

  ニューヨーク外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が上昇。約2週間で最大の上げとなった。トランプ氏によるパウエル氏解任懸念から2023年12月以来の安値に沈んだ前日から持ち直した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1221.625.480.45%
ドル/円¥141.57¥0.710.50%
ユーロ/ドル$1.1421-$0.0094-0.82%
  米東部時間16時51分

  スコシアバンクのストラテジスト、ショーン・オズボーン、エリック・セオレ両氏はリポートで「ドル売りは比較的短期間で大きく進行しており、目先は弱気トレンドの中でも幾分の安定があるかもしれない」と指摘。「だが、FRBの独立性を巡る懸念や出口がはっきり見えない関税政策、米経済見通し悪化といったドルに対する逆風は、ドルを救えるほど早期には解消されない可能性がある」と述べた。

  円は対ドルで141円台半ばに下落した。東京時間には一時1ドル=140円の節目を突破し、昨年9月以来の高値を更新。ニューヨーク時間に入っても午前の取引では総じてプラス圏で推移していたが、午後にかけて下げ幅を広げる展開となった。

  みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、ドル・円相場における140円は重要な心理的節目だと指摘。その水準ではオプションバリアが存在するため、トレーダーが守ろうとするだろうと述べた。

  BofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストはリポートで、円の上昇はユーロに比べて脆弱(ぜいじゃく)であり、日米貿易交渉が進展すれば、ユーロ・円の方向性に関して上向き方向への見直しにつながり得ると指摘。ユーロ・円のロング推奨を維持した。

  また、参院選に向けたリスクは円安方向に傾いているとみているが、市場のテーマとして扱うには時期尚早だと指摘。日米が合意に達すれば、低迷する石破政権の支持率回復に寄与する可能性はあるが、どの程度の影響になるのかは不透明との見方を示した。

ドル・円相場の推移

米国債

  米国債相場では、2年債利回りが上昇。入札の引き合いが弱く、売りが膨らんだ。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.88%-2.6-0.53%
米10年債利回り4.39%-1.6-0.36%
米2年債利回り3.82%5.51.45%
  米東部時間16時53分

  ただ、トランプ米大統領によるパウエルFRB議長解任を巡る懸念から「米国売り」が加速した前日からは、一定の落ち着きを取り戻した。

  2年債利回りは入札後、一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上昇し、 3.82%に近づいた。一方、長期ゾーンは利回りが低下。前日進んだイールドカーブのスティープ化が一部巻き戻された。

  米財務省が実施した2年債入札(発行額690億ドル)の最高落札利回りは3.795%だった。2024年9月以来の低水準だが、入札前取引(WI)水準を0.6bp上回った。これは需要が想定を下回ったことを示す。

  ディーラーの落札比率は13.7%で、直近6回の2年債入札の平均である11.6%を上回った。外国中銀を含む間接入札者の落札比率は56.2%と、ここ2年で最も低かった。一方で、直接入札者の落札比率は30.1%と、2004年以降のデータで記録的な高水準となった。

  23日には5年債、24日には7年債の入札が行われる。

  BNYマーケッツのジョン・ベリス氏によると、米国債を含めた米債券市場から、国外の実需筋による資金流出が続いている。過去数年で最大級の流出となった前週に比べ、先週の流出ペースはやや緩和したと同氏は述べた。

  オックスフォード・エコノミクスのストラテジスト、ジョン・キャナバン氏はリポートで「現在の市場環境では、米国債入札に対するリスクが短期ゾーンに圧力をかけている」と指摘。「何が安全資産なのか市場参加者が問い直す中で、独連邦債の利回りは低下し、米国債をアウトパフォームしている」と述べた。

US and German 2-Year Yields Diverge

原油

  原油先物相場は反発。株式相場の上昇や、米国がイラン産原油の供給を制限する可能性が意識された。また、トランプ大統領が22日にイスラエルのネタニヤフ首相と電話協議を行い、貿易政策や対イラン政策において両国が足並みをそろえていると述べたことも原油相場を支えた。 

  この日のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時3%を超える上昇となったが、その後は上げ幅を縮小。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、ロシアのプーチン大統領が現在の前線を基準にウクライナ侵攻を停止する用意があると報じたことに反応した。

Oil Rises, Tracking Broader Market Movement | US crude erases last session's losses on Trump's Fed rebuke

  原油先物相場は今月に入って大きく値を下げた。その背景には、トランプ関税が経済成長鈍化や原油消費減少につながるとの懸念が広がったことや、供給過剰への警戒感があった。  

  モルガン・スタンレーのグローバル石油ストラテジスト、マルタイン・ラッツ氏は「短期的には、売りの大きな波はすでに通過したとみている」とブルームバーグ・テレビジョンのインタビューで発言。その上で「夏場にかけては季節的な需要が相場をある程度支える可能性があるが、年後半には再び下押し圧力が強まる局面も訪れるだろう」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は前日比2%高の1バレル=63.67ドルで終了。この日が最終取引日だった5月限は64.31ドル。

  ロンドンICEの北海ブレント6月限は1.8%上昇し、67.44ドルで取引を終えた。

  金相場は反落。スポット価格は一時、1オンス=3500ドルを初めて突破したが、今月に入ってから約10%上昇していただけに利益確定の動きが広がった。

  金価格は足元で買われ過ぎの領域にあり、上昇が行き過ぎだった可能性も示唆されている。相対力指数(RSI、14日間)は78を超え、一般的に「買われ過ぎ」とされる70を上回っている。

  MKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は「金相場は8営業日で500ドル超の上昇と戦術的には過熱気味となっていることから、買い一服やリスク調整があるのは不思議ではない」と語った。

Gold Pares Gains as Traders Book Profit After Rally | The precious metal is in overbought territory

  ブルームバーグのマクロストラテジスト(在ドバイ)、ベン・ラム氏も「金は短期的には極めて買われ過ぎの状態にあり、調整局面入りの可能性が高まっている」と指摘。その上で「ただ、これを中期的な見通しと混同すべきではない。金は世界経済に不安が広がる局面で最も強さを発揮する資産であり、現在の経済的不透明感は極めて強い」とリポートに記した。

   金スポット価格はニューヨーク時間午後2時20分現在、前営業日比32.96ドル(約1%)安の1オンス=3391.02ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は5.9ドル(0.2%)安の3419.40ドルで引けた。

原題:Stocks Rebound as Traders Bet on Tariff Progress: Markets Wrap

US Short-Term Yields Extend Climb After Weak Demand for Auction

Dollar Climbs as Canadian Loonie Rises With Oil: Inside G-10

Dollar Has Best Day in Over Two Weeks; Loonie Rises: Inside G-10

Oil Rises as Potential US Pressure on Iran Adds to Broad Rebound

Gold Slides From $3,500 on Profit Booking After Rally to Record(抜粋)

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トランプ米大統領
トランプ米大統領 Photographer: Chris Kleponis/CNP

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A Tesla dealership in Tokyo, Japan. Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

米電気自動車(EV)メーカーのテスラは22日発表した決算報告書で、2025年通期の売上高増加見通しを撤回し、次の四半期に予想を見直す方針を示した。関税や、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に対する反発などが、同社に打撃を与えていることを示す兆候だ。

  発表資料によると、1-3月(第1四半期)の調整後1株利益は27セントで、アナリスト予想平均を下回った。通期売上高が成長へ回帰するとした以前の見通しを撤回した代わりに、「車両事業の成長に向けて堅実な投資を行っている」と説明。これは、生産の増加や「より広範なマクロ経済環境」などの要因に左右されるとした。

  さらに、「グローバルな貿易政策の変化が、自動車とエネルギーのサプライチェーン、当社のコスト構造、耐久財および関連サービスの需要に与える影響を測定することは困難だ」との見解を示した。

  決算発表を受けた時間外取引でテスラの株価は米東部時間午後4時41分(日本時間23日午前5時41分)現在、ほぼ変わらず。

  テスラは昨年、通期売上高の成長目標を過去10年余りで初めて達成できなかった。今月発表した1-3月期の納車台数はアナリスト予想を下回った。

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原題:Tesla Profit Misses as Carmaker Warns of More Tariff Pain Ahead(抜粋)

(発表内容を追加して更新します)

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