▽【米国市況】米財務長官発言で円一段安、対ドル143円台半ば-株続伸
Rita Nazareth、Emily Graffeo、Isabelle Lee
- 日本との通商交渉で「通貨目標は一切ない」とベッセント氏が明言
- 中国とFRB巡りトランプ氏の強硬姿勢に軟化の兆し、米資産を支援
23日のニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで下落。日本との通商交渉において為替レートの具体的な目標を追求するつもりはないとのベッセント米財務長官の発言を受けて一段安となり、一時1.4%安の143円57銭まで売られた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1228.60 | 6.98 | 0.57% |
ドル/円 | ¥143.48 | ¥1.91 | 1.35% |
ユーロ/ドル | $1.1313 | -$0.0108 | -0.95% |
米東部時間 | 16時56分 |
ベッセント氏は、日本との通商交渉で為替水準の直接的な是正を促す目標を求めるのかとの質問に対し、「通貨目標は一切ない」と言明。「G7合意を尊重することを日本には期待している」と語った。
日米は米ワシントンで開催の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせ、加藤勝信財務相とベッセント財務長官が会談する予定となっている。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。ドルは主要通貨に対して全面高となった。通商政策を巡る米中対立の緩和への期待に加え、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長解任を巡る懸念が和らいだことが背景にある。
4月の米総合購買担当者指数(PMI)は2023年以来となる緩やかなペースでの企業活動拡大を示す一方、将来の生産を示す指数は2022年10月以来の低水準となった。
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏はPMI統計について「米経済が主要国・地域の中で依然として比較的良好なパフォーマンスを維持していることを示している」と指摘。「米国のリセッション(景気後退)懸念が和らげば、米国資産に対する市場の信認回復に寄与し、ドルの支援材料にもなる」と語った。

株式
米国株式市場は続伸。トランプ大統領が中国とFRBに対する強硬姿勢を後退させている兆候が示され、相場を支援した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5375.86 | 88.10 | 1.67% |
ダウ工業株30種平均 | 39606.57 | 419.59 | 1.07% |
ナスダック総合指数 | 16708.05 | 407.63 | 2.50% |
S&P500種株価指数は1.7%高。貿易戦争が激化した4月初旬以来、初の2営業日続伸となった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は米当局者の話として、全体的な対中関税がおよそ50%から65%の間に下がる可能性があると報道。同指数はこれを受けて一時3.4%上昇していた。
関連記事:トランプ氏、対中関税「大幅」引き下げ示唆-中国の出方うかがう (2)

だがその後、トランプ氏は対中関税引き下げを一方的な形で提案したことはないとベッセント長官が発言。ホワイトハウスのレビット報道官も、対中関税を一方的に引き下げることはないとした上で、トランプ氏が中国に対するスタンスを軟化させているわけではないと述べた。こうした発言を受けてS&P500種は伸び悩んだ。
ノースウェスタン・ミューチュアル・ウェルス・マネジメントのブレン・シュッテ氏は「緊張の度合いがどれほど強いのかどうかという認識の問題に過ぎない」と話す。その上で「将来の見通しがある程度明らかになるまで、今後数カ月にわたり貿易摩擦の激化と緩和が繰り返される中でこのような状況が続く」との見方を示した。
個別銘柄では、市場予想を上回る決算を発表したボーイングが約6%値上がり。テスラも高い。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が米政府関連業務から「大幅に」手を引き、同社の経営に集中する考えを表明したことが追い風となった。
ネーションワイドの投資調査責任者マーク・ハケット氏は「市場は目を見張る回復を試みている。関税やパウエルFRB議長に関するトランプ政権の姿勢が変化しつつあり、これが様子見姿勢の投資家を引き戻している」と述べた。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「前日から大きく値上がりしており、利益確定の動きが出ても特段珍しいことではない」と指摘。今月9日や14-15日の上昇局面でも、この日の高値付近で上値抵抗線に直面していたと続けた。
その上で「協議はまだ始まっておらず、最終合意には2-3年を要する可能性があるとのベッセント財務長官の発言を受けて、中国との貿易摩擦緩和に対する市場の期待が抑えられたとしても理解できる」と述べた。
パイパー・サンドラーのマイケル・カントロウィッツ氏は「政策が主導権を握っていると見ているため、足元では企業業績や景気の先行きについて予測するために多くの時間を割くことはしていない」と指摘。「政策の見通しが明確になり、市場への影響力が弱まれば、景気や企業利益の見通しが再び重視されるようになるだろう」と続けた。
「まだ難局を脱したとは考えていないが、相場が調整局面から立ち直り始めるのは、主因が『癒え』始めた時だとの歴史の教訓には留意する必要がある」とも語った。
米国債
米国債相場では、長期債利回りが低下。トランプ氏がパウエル議長解任の可能性について否定的な考えを示したほか、対中関税引き下げの見通しに言及したことが好感された。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.83% | -5.0 | -1.03% |
米10年債利回り | 4.39% | -1.4 | -0.31% |
米2年債利回り | 3.87% | 5.2 | 1.36% |
米東部時間 | 16時56分 |
30年債利回りは、一時17ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し4.71%を割り込んだ。10年債利回りも15bp低下する場面があったが、両年限ともその後、低下幅を縮小した。
一方、米金融政策に敏感な短期債利回りは上昇。米国の住宅ローン金利が高止まりする中でも3月の新築住宅販売が市場予想を上回ったことが材料視された。5年債入札に対する需要が堅調だったことで、外国人投資家による米資産離れの懸念は和らいだ。
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・ストラテジー責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「パウエルFRB議長と中国を巡って、短期的には明確なトーンの変化が見られる」と指摘。「長期金利の上昇、イールドカーブのスティープ化、株価下落の取引が巻き戻されているが、広範なリリーフラリー(安心感による相場上昇)がどの程度続くかは依然として不透明だ」と述べた。

5年債入札(発行額700億ドル)は堅調な結果となった。最高落札利回りは3.995%と、入札前取引(WI)水準を1bp下回り、投資家が想定を下回る利回りを受け入れたことを示した。
米財務省とFRBの直近データによると、外国投資家の保有額の60%以上は償還期限が5年以下に集中しており、外国投資家の需要動向を見極める上で5年債入札の結果に注目が集まっていた。24日には7年債入札が続く。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「米国外の投資家で、トランプ氏の最近の発言を額面通りに受け取るなら、5年債を購入すべきタイミングだろう」と述べた。
外国中銀などを含む間接入札者の落札比率は64%と、2020年以降に実施された5年債入札の平均に近かった。
原油
原油先物相場は反落。米中関税協議の行方を巡る楽観も広がったが、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスの一部が生産引き上げを求めるとのロイター通信による報道の方が強く意識された。
ロイターはこれに先立ち、カザフスタンのアッケンジェノフ新エネルギー相が同国は国際石油メジャーが管理する3つの大型プロジェクトを抱えているため、生産を削減できないと述べたとも伝え、市場に売り圧力がかかっていた。
一方、カザフスタン政府は23日に声明を発表し、OPECプラスとの引き続き前向きに協力していくとした。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は前日比1.40ドル(2.2%)安の1バレル=62.27ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は約2%安の66.12ドルで取引を終えた。
金
金相場は大幅続落。ホワイトハウスが米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を巡る強硬姿勢を和らげたことや、関税に関するトランプ政権からの一連の発言が意識された。
サクソバンクの商品戦略責任者、オーレ・ハンセン氏は、対中関税引き下げの兆候やパウエルFRB議長に対するトランプ氏の姿勢の変化が市場に「アドレナリンを注入し、株式相場を大きく押し上げた」と指摘。「金融市場全体に広がった不安が大きな追い風になっていた金相場は逆方向に動いた」と語った。
関連記事:トランプ米大統領、パウエルFRB議長解任の意図はない

ブルームバーグのデータによると、世界最大の金連動型上場投資信託(ETF)である「SPDRゴールド・シェア」は22日に12億7000万ドル(約1820億円)の資金流出を記録。一日当たりの流出額としては少なくとも過去1年で最大となった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比98.06ドル(約2.9%)安の1オンス=3282.57ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は125.30ドル(3.7%)安の3294.10ドルで引けた。
原題:S&P 500 Sees First Two-Day Gain Since Early April: Markets Wrap
US Treasuries Rally as Worries Over Trump Tariffs and Fed Ease
Dollar Gains in Relief Rally, Yen Lags Many Peers: Inside G-10
Oil Falls as OPEC Fears Outweigh Possible Easing of China Levies
Gold Slides as Trump’s Softer Stance on Fed and China Ease Fears(抜粋)