預言者・ダリオ氏は以下のような警告を発している、「米国を中心とした世界経済秩序の崩壊が避けられない段階に入った」と。同氏は米国と貿易関係を持つ多くの輸出入業者が、関税問題の行方に関わらず米国との取引を大幅に縮小する計画を進めていると指摘する。その上で、「米国との相互依存関係を根本的に削減する動きが現実のものとなっている」と強調している。レイ・ダリオ氏は世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者。2008年の金融危機、リーマンショックを正確に予測した実績を持つ。個人的にはこの人を預言者だと思っている。その彼がトランプ革命の先行きに警告を発しているというのだから、これは一大事と思って調べてみた。
暗号資産専門メディア、CoinPostに同氏に関する原稿が掲載されていた。タイトルは「著名投資家ダリオ氏が警告『景気後退よりも深刻な事態が起きる可能性』 解決策は?」である。同氏は「貨幣秩序の崩壊や大きな国内および国際秩序の変化を目の当たりにしている今の時代は、1930年代と非常によく似ている」と指摘。「関税と過剰債務、地政学的な勢力図の変化が組み合わさると、対応次第で景気後退よりもずっと深刻な混乱を引き起こす可能性がある」と警告しているのだ。「1971年の金融危機、あるいは2008年の金融危機のような事態になるかもしれない。同時に他の問題も発生すれば、さらに悪い状況になる可能性もある。景気後退、政治紛争、そして国際紛争が同時に起こることを想像してみたらわかる」。プーチンはウクライナに無差別攻撃を仕掛けている。中東ではイスラエルに米国が加わってハマス、ヒズボラ、イエメンのフーシ派と血みどろの戦争が続いている。
米中はトランプ氏の相互関税をめぐって抜き差しならない局面を迎えている。不安が不満に変わり、不穏な吸気が世界を覆い始めた。グローバル主義に伴う格差拡大や富の偏在、一方で世界の大国は日本を含めて巨額の財政赤字に喘いでいる。財政赤字の反面教師か、地球は逆に過剰流動性に覆われ、マネーゲームの嵐が吹き荒れている。トランプ革命は地球の危機に立ち向かう一策か。だが、America Firstだ。MAGAと印字された赤い帽子をかぶって喜んでいる姿を見せられると、世界中の輸出入業者に限らず、多くの人が嫌悪感を覚える。ダリオ氏は「協調的で賢明な行動をとれば、この移行を秩序ある形で乗り越えることができる」と主張する。そうだろうか。誤解を恐れずに言えば、個人の自由と尊厳という価値観を共有する西側が、ロシアや中国に代表される強権的な独裁国家を倒さない限りこの混乱は続く。グローバリズムはなかなか倒れない。そんな気がする。