▽米減税法案で浮上の「MAGA口座」、米国株投資で子供の未来を支援
Ben Steverman
- 今後数年間の新生児に1人当たり1000ドル支給、米国株で運用
- 年間拠出上限5000ドル、税制優遇で政府の税収は10年で45億ドル減へ
5月12日に米下院の共和党指導部が発表した4兆ドル(約590兆円)規模の税制法案には、トランプ大統領の主要経済政策を巡る議会での争点となる条項が盛り込まれているが、その中に異例の新制度が含まれている。「MAGA口座」と名付けられた新たな貯蓄制度で、今後数年間に米国の新生児1人につき1000ドルが支給されるという内容だ。
この資金は米国株に投資され、受益者が18歳になるまで引き出せない。高等教育や職業訓練、小規模事業への融資、初めての住宅購入などの費用に充てることが目的で、法案文によると「経済的安定」を促すための制度とされている。
以下はその仕組みの詳細だ。
MAGA口座の対象者
法案によれば、正式名称を「Money Account for Growth and Advancement(成長・前進のための資金口座)」とするMAGA口座は、2026年1月1日以降、8歳未満の子どもを持つ親によって開設できる。
また、試験的プログラムとして、25年初めから28年末までに生まれた新生児に米政府が1000ドルを口座に拠出する。口座を持っていない対象児童には、米財務省が自動的に口座を開設する。

拠出限度額
各口座への年間拠出上限は5000ドルで、インフレに応じて調整される。親や親族、保護者の雇用主などが時間をかけて拠出していくことが想定されている。
連邦、州、地方、部族政府も拠出可能であり、これらは上限の対象外となる。
運用方法
拠出は全て現金で行い、受益者が18歳になるまで可能だ。
運用管理は銀行などの金融機関が担い、インデックスファンドや分散型ポートフォリオを通じた米国株投資のみが許可される。法案によれば、運用にかかる手数料は低く抑える必要があり、レバレッジ(借り入れによる投資)は禁止される。
資金の引き出し
MAGA口座の資金は18歳までは引き出せず、その後も25歳までは最大半額までしか引き出せない。口座は31歳で自動的に閉鎖され、全額が所有者に分配される。
税制優遇措置
口座の資金は引き出すまで課税されず、受益者が資金を特定の用途に使う場合は、より低い長期キャピタルゲイン税率が適用される。対象となる支出には、大学などの高等教育、住宅購入、小規模事業の立ち上げにかかる費用などが含まれる。
その他の用途に使う場合は、通常の所得税が課され、さらに受益者が30歳未満であれば追加で10%課税される。
連邦政府の費用負担
25年から28年に生まれる赤ちゃん1人につき1000ドルを支給すると、連邦政府の負担は約130億ドルに上ると、税制合同委員会は試算している。
さらに、税制優遇措置により今後10年間で約45億ドルのコストが見込まれるが、これは税制法案全体の中でごく一部に過ぎない。
発案者と支持者
MAGA口座の推進役となったのは、昨年からこの構想を提唱してきたハセット国家経済会議(NEC)委員長によるものと見られる。エコノミストのロバート・シャピロ氏とともに、新生児に1000ドルを提供するというアイデアを打ち出していた。
テキサス州選出のクルーズ上院議員も5月12日に同様の構想を提案し、デル・テクノロジーズ創業者で億万長者のマイケル・デル氏の支持を得ていると述べた。
ホワイトハウスも同案を支持している。ホワイトハウスのフィールズ報道官は「MAGA口座は米国の子どもたちに強固な経済基盤を与え、アメリカン・ドリームの実現を後押しするものだ」と述べ、「この歴史的政策は、大胆な減税、経済成長、そして家族・労働者・中小企業への救済と相まって、トランプ大統領の米国第一の優先事項を反映している」と説明した。
原題:‘MAGA Accounts’ Push Americans to Buy US Stocks for Kids’ Future(抜粋)