▽トランプ政権の文化戦争、背後にミラー氏-返り咲き信じ続けた側近

Nancy Cook

  • 強硬な移民政策や有名大をトランプ氏の意向に従わせる取り組み主導
  • 様々な人と協同できる点で、政権関係者の中では希少な資質備え持つ

第2次トランプ米政権が連邦政府と米国社会の再構築を急ピッチで進めている。その背後でこの取り組みを強力に推し進めているのがミラー大統領次席補佐官(39)だ。  

  トランプ大統領の側近として約10年にわたり影響力を確実に高めてきたミラー氏は元々、ホワイトハウス内で移民政策の中心人物として知られてきた。1期目から米・メキシコ間の国境封鎖や、米国で生まれた子どもに自動的に米国籍が与えられる「出生地主義」の廃止を目指しており、2期目でもトランプ氏の返り咲き前から計画を練ってきた。

  出生地主義については最高裁判所が前週末27日、トランプ政権の主張を認める判断を下し、廃止の実現に向けて一歩前進する結果となった。

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  ミラー氏は現在、全米の有力大学をトランプ氏の意向に沿わせる取り組みも主導。ハーバードやコロンビアなどの有力大学に対し、親パレスチナ系抗議デモに絡み、ユダヤ系の学生を十分に保護しなかった、あるいはDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みにより白人学生を差別しているとの主張を展開している。

  トランプ政権は大学に対する連邦補助金の交付停止や外国人留学生の逮捕などを強行。さらには学生構成の変更も試みている。これら一連の対応は西洋文明の保護と教育の基礎回帰というミラー氏の理念に基づくものだと、政権関係者は解説する。先週には、バージニア大学のジェームズ・ライアン学長がDEI政策を巡る政権の圧力を受けて辞任を表明した。

  共和党のニュート・ギングリッチ元下院議長はミラー氏について「恐らくホワイトハウス内で最も影響力のある人物の1人だ。2015年からトランプ氏を一貫して支えてきたことでその地位を築いた」と話す。

希少な資質

  政権内でのミラー氏の影響力は着実に拡大している。1期目では内部抗争を生き延び、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件後もトランプ氏に寄り添った。復権を目指した2024年の大統領選にも深く関与した。

  ミラー氏はワイルズ首席大統領補佐官や同氏の側近、過去の選挙陣営関係者らと緊密な関係を維持することで、2期目も乗り切っている。一方、富豪のイーロン・マスク氏とトランプ氏の交友関係を巡っては一定の調整を迫られた。ミラー氏の妻ケイティ氏はマスク氏の下で働いている。

  表向きの強硬姿勢とは裏腹に、ミラー氏は政権内で派閥を問わず、さまざまな人々と協働できる。この点において、トランプ政権関係者の中では希少な資質を備えた人物でもある。

  ミラー氏は当初、ジェフ・セッションズ元上院議員の側近としてトランプ氏の陣営に加わり、移民政策ではスティーブ・バノン氏と歩調を合わせた。その後司法長官になったセッションズ氏が政権内で失脚すると、同氏から距離を置き、やがてトランプ氏の娘イバンカ氏や娘婿のジャレッド・クシュナー氏、ラリー・クドロー元国家経済会議(NEC)委員長らと親交を深めた。その後の数年間で、ワイルズ氏やトランプ氏の息子トランプ・ジュニア氏、バンス副大統領、さらにはマスク氏にとっても不可欠な存在となったと、別の側近は語った。

  1期目で立法問題担当ディレクターを務めたマーク・ショート氏は「ミラー氏は政権内部での政治的駆け引きに長けている。移民などの政策には強い情熱を持つ一方で、大統領に対しては非常に謙虚で、自身の主張が前に出過ぎないよう心得ている」と語る。

デューク大での経験

  政権関係者によると、ミラー氏は2000年代後半に在籍したデューク大学での経験がきかっけとなって、エリート大学に反感を抱くようになった。同氏は学生時代に、大学新聞に論説を寄稿するとともに、2006年に黒人女性がデューク大の白人ラクロス部員3人を虚偽のレイプ容疑で告発した事件を追った。同事件は全米の注目を集め、人種や階級を巡り議論が巻き起こった。

  ミラー氏はそれ以降、米国の名門大学は多様性や政治、宗教などに過度に偏重し、国家の利益に反しているとの見解を抱くようになったと、トランプ氏の側近らは話す。2007年には大学新聞に「過激主義の肖像」と題したリベラル教授陣への批判論文を掲載した。

  ミラー氏はトランプ氏の再登板を確信していた数少ない側近の1人であり、移民や高等教育など文化戦争の争点に関する法的戦略を練るため、自ら設立したシンクタンク「アメリカ・ファースト・リーガル」で構想を温めてきた。

  ミラー氏は本記事に関するコメント要請に応じていない。ホワイトハウスのレビット報道官は声明で「スティーブン・ミラー氏はトランプ大統領が最も信頼し、最も長く仕えてきた側近の1人であり、その理由は彼が確実に結果を出す人物だからだ」と述べた。

President Trump Holds First Cabinet Meeting
閣議に出席するミラー氏(後列左から2番目)Photographer: Al Drago/Bloomberg

原題:Stephen Miller Expands Clout in Trump Push on Immigrants, Ivies(抜粋)