上乗せ関税の停止期間を9日に控えて、関税をめぐる交渉が難航している。米政権内部の意志統一もなされていないような雰囲気だ。日本に限らずE U 、韓国、中国も水面下で依然として抵抗しているようだ。トランプ大統領は7日に新たな税率を盛り込んだ書簡を、関係各国に送付すると表明した。新関税の実施は8月1日。書簡が届いたあと3週間ほどの猶予期間がある。この間に各国から大幅な譲歩を引き出す。いわゆる“トランプ圧力”だ。適用時期が再度延期される可能性もある。適用対象国が“共闘”すれば、新しい局面に移行する可能性もあるが、それをリードする政治家は見当たらない。トランプ大統領は1期目にTPP交渉から離脱した。集団交渉を嫌って個別交渉を選択したのだ。トランプ氏の意向に沿う形で個別交渉が延々と続いている。それでもトランプ氏は苦戦している。トランプ圧力が限界に直面しているようにみえる。

一体全体この交渉は終結を迎えられるのか。参院選の最中でもある。石破総理は「安易な妥協はしない」と、テレビ局が主催した各党の代表を集めた討論会で断言した。これが何を意味するのか、総理の真意は依然としてはっきりしない。この間、「国益を損なうような妥協はしない」とも明言している。国益とはこの場合自動車関税を意味している。石破・赤沢ラインはこれまで自動車関税の撤廃を求めて米国との交渉を続けてきた。赤沢氏はこれまで7回訪米している。にもかかわらず、これまでのところ日米の通商担当者による交渉に「大きな進展はない」。業を煮やしたのかトランプ大統領は1日、日本について「極めて大きな貿易赤字を抱えているため、30%や35%、あるいはわれわれが決める数字」の関税を課すことになるだろうと断言。「合意に至るかどうか分からない。日本と合意できると思えない。彼らは非常に手ごわい」とも述べた。

Bloombergによると米国側の交渉責任者であるベッセント財務長官は昨日、「交渉期限の延長示唆-通知する関税率は確定と限らず」とテレビ局のインタビューで発言した。大統領との間にかなりの“温度差”がある発言だ。この間、トランプ氏の1丁目1番地ともいうべき減税法案、「一つの大きくて美しい法案」(One Big Beautiful Bill )が米上下両院で可決、4日にトランプ氏の署名を経て成立した。同法をめぐってはトランプの盟友ともいうべきマスク氏が強烈に批判、6日には新党設立を宣言した。新たな減税策などを盛り込んだ今回の計画は、実行されると巨大な財政赤字が発生すると、大方の論者が予想している。これを埋め合わせる財源がトランプ関税だ。トランプ氏としても妥協が許される状況ではない。となれば大統領主導で強引に決着する可能性もありそうだ。いずれにしても受け入れ国側がどこまで抵抗するのか、トランプ関税は今週中に最大の山場を迎える。

参考
▽トランプ氏が公開した石破総理宛の書簡