米国のエンタメ大手WBD(ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー)買収問題が、米国メディアの餌食になっている。メディアが餌食にしているのか、メディアが餌食にされているのか判然としないが、トランプ大統領がこの買収劇に介入した途端、買収の先行きそのものが怪しくなっている。要するに報道機関の再編に向けた大統領の思惑が透けて見えるのだ。そこにつけ込もうとするメディアの思惑とは別に、メディア自体の偏向報道が論点として浮上しそうな雲行きでもある。一方でNetflix、Paramount–Skydanceという巨大エンタメ企業がWBDの買収合戦を繰り広げる構図が、鵜の目鷹の目の投資家の興味を掻き立てている。誰も買収の先行きを予想できない。強引とも言えるトランプ氏が対応を誤れば、来年の中間選挙にも影響が出るだろう。混迷する米国いまを象徴するような買収劇だ。

動画サイトでのしあがったNetflixが、米エンタメ業界の雄であるWBDの買収で合意した途端、もう一方の巨大企業であるParamount–SkydanceがWBDに敵対的買収を仕掛けたところから、史上最大の買収劇の混乱が始まった。Netflixが提示した買収金額は1株27.75ドル。これに対してParamountは1株当たり30ドルの買収案を新たに提示した。買収価値はNetflixの11兆円超に対してParamountは約17兆円におよぶ。金額もさることながら、WBDとParamountの傘下には報道機関であるCNNやCBSが入っている。とりわけCNNはトランプ氏が第一期の大統領に就任して以来の“宿敵”でもある。Bloombergは今朝配信した記事で、「トランプ氏にとって今回のワーナー売却は、長年批判してきた主流メディアの勢力図を再構築する好機」に映ると解説する。「特にCNNへの敵意は根強い」と強調する。

Netflixの買収提案にはCNNは含まれていないが、パラマウントはCNNを含む全資産を対象に買収を目指している。パラマウントグループは、トランプ氏の娘婿であるクシュナー氏と親密な関係にある。トランプ氏自身はどちらを推すか態度を明確にしていない。だが、NetflixとWBDがいったん合意した買収劇に敵対的買収を仕掛けたParamountに、CNNの編集権の見直しを期待しているのでは、との大統領の“思惑”が見え隠れしている。結果はどうなるかわからない。決着は長期戦になるとの見方もある。とはいえ、民間企業のM&Aに介入する大統領も異常なら、メディアの報道もいつになく過激だ。巨大企業の陣取り合戦に大統領が絡み、行政も投資家も浮き足立っている。大統領も異常なら、大統領の取り込み合戦を展開する企業も異常。WBD買収劇は異常な米国の異様さを際立たせている。