• 独立機関の権限に影響、Netflixとパラマウントの対決は未知の領域
  • トランプ氏の個人的利益と規制当局の審査の境界が曖昧になる恐れ
Paramount, Netflix Battle For Warner Bros. Takeover
Photographer: Elijah Nouvelage/Bloomberg

Jennifer A DlouhyLeah Nylen

ハリウッドには長年、個人的な確執や政治的対立、不確かな忠誠心が業界を形作ってきた歴史であふれている。通常、米国の大統領が関わることはあまりない。

  だが、トランプ大統領が米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの売却計画に自ら関与すると宣言したことで、Netflixとパラマウント・スカイダンスの間で繰り広げられているハリウッドの至宝を巡る争奪戦は未知の領域に入った。

  法務専門家によれば、トランプ氏自身が複数の利害関係を抱える状況を考えると、今回の介入は極めて異例だという。

  トランプ氏はすでに、ワーナー売却に対する個人的な前提条件として、長年の「宿敵」とみなすニュース専門局CNNの新たな所有者を求める姿勢を示している。CNNの報道姿勢をより好意的なものに改める狙いとみられる。

  だが、関係はそれだけにとどまらない。「最高のディールメーカー」と自称するトランプ氏の義理の息子で元大統領補佐官のジャレッド・クシュナー氏は、パラマウントのデービッド・エリソン最高経営責任者(CEO)の資金調達を支援している。エリソン氏の父ラリー・エリソン氏は、トランプ氏の長年の支持者であり献金者でもある。

  一方、Netflixのテッド・サランドス共同CEOも独自の働きかけを強めており、トランプ氏と繰り返し面会し、大統領一家が同社の「大ファン」であることを話題にするなど宣伝攻勢をかけている。同社はここ数カ月、ワシントンでのロビー活動を拡大し、トランプ氏と側近らが支配する首都での影響力を強めている。

  こうした動きは、従来は米司法省の管轄下で進められてきた堅実な審査手続きから大きく逸脱するもので、経営陣や株主は政治的配慮と市場メカニズムの双方を読み解かねばならない状況に陥っている。

President Trump Participates In Kennedy Center Honors Medal Presentation
トランプ米大統領Photographer:Bonnie Cash/UPI/Bloomberg

  オバマ政権下の米司法省反トラスト局で要職を務めたビル・ベアー氏は「ワーナーへの二つの買収提案者に対する調査が始まっていない段階で、大統領がこうした見解に達しているのは、私の経験上前例がない」と述べた。

権限拡大への動き

  パラマウントの提案についてワーナー株主が投票を行うはるか前に、ましてや正式な反トラスト法(独占禁止法)審査が行われる前に、トランプ氏がこうした発言を行ったことは、連邦取引委員会(FTC)などの独立した連邦機関の権限を狭め、大統領権限の範囲を押し広げようとする最新の事例だ。

  トランプ政権2期目では、大統領権限を積極的に行使し、世界貿易や米国内産業の再編を進めてきた。この傾向は、企業経営者が大統領の機嫌をうかがい、注目案件の承認を得ようとする動きを誘発している。

  専門家は、トランプ氏のワーナー売却への介入が自身の個人的利益と、市場集中などの問題に対する規制当局の審査との境界線を曖昧にしかねないと警告する。トランプ氏のアプローチが売却を危うくし、司法省の審査を曇らせ、政府が承認しても法的な攻撃を受けやすくする恐れがあるという。

  トランプ氏にとって今回のワーナー売却は、長年批判してきた主流メディアの勢力図を再構築する好機だ。特にCNNへの敵意は根強い。Netflixの買収提案にはCNNは含まれないが、パラマウントはCNNを含む全資産を対象に買収を目指している。

  今年CBSニュースを傘下に置いたパラマウントのエリソン氏は、反リベラル派として知られるバリ・ワイス氏を編集長に起用しており、トランプ氏はCNNでも同様の体制刷新が行われることに期待を寄せている。

0:22トランプ大統領の発言

  トランプ氏は10日、「今の経営陣やCNNを率いている人々は非常に不誠実な集団だと思う。彼らがそのまま経営を続けることは許されるべきではない。CNNも他の事業と一緒に売却されるべきだ」と語った。

  ホワイトハウスのレビット大統領報道官は、「大統領はそのネットワーク(CNN)が新たな所有者の下で再出発することで恩恵を受けられると考えている」と述べた上で、「競合する両社をいずれも尊重している」としたが、プロセスへの詳細なコメントは避けた。

法的リスク

  米国の反トラスト法は、競争を著しく制限したり独占状態を形成したりする可能性がある合併・買収を禁止している。トランプ氏は10日の発言で、パラマウントとNetflix双方の市場シェアを精査したいと述べていたが、翌日にはCNNに話題を転じた。

  州司法長官らは、連邦政府が売却を承認した場合でもトランプ氏の発言を根拠に独自の反トラスト訴訟を起こす可能性がある。また、売却に関与する企業が最終決定に不服を申し立てる際の法的材料にもなり得る。

原題:Trump’s Warner Bros. Meddling Pushes Limits of Executive Power(抜粋)

▽Netflix株急落、個人投資家呼び込む-ワーナー買収懸念の中で逆張り<bloomberg日本語版>2025年12月12日 at 10:53 JST

  • 今月2-10日に株価15%下落でも、買い注文が売り注文を上回る
  • 過去2カ月では23%安、売上高先行き巡る懸念やWBD買収目指すリスク
Paramount, Netflix Battle For Warner Bros. Takeover
Photographer: Ethan Swope/Bloomberg

Jeran WittensteinBailey Lipschultz

米動画配信大手Netflixの時価総額は、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)買収提案を巡る懐疑的な見方を背景にわずか6営業日で400億ドル(約6兆2000億円)消失した。だが個人投資家にとってこれは明確な買いシグナルとなっている。

  今月2-10日に株価が15%下落し、6営業日として2022年5月以来最大の下げとなる中でも、個人投資家はNetflix株を積極的に購入。ウォール街が長引く買収合戦の行方を見極めようとする中、インタラクティブ・ブローカーズのプラットフォームでは8日までの1週間で売買高が3番目に多かった。

  株価が11日に一時2.3%高とやや持ち直す中でも、個人投資家はなお買い攻勢にある。フィデリティのプラットフォームでは買い注文が売り注文を約3対1の割合で上回っており、JPモルガン・チェースのデータも個人の強い買い意欲を示した。

  インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「顧客は、回復しそうだと感じる銘柄で押し目を狙う傾向がある」とし、WBDとの取引、ボラティリティー、株価下落の3要素が「この銘柄が目立つようになった理由だ」と語る。

  Netflix株は過去2カ月では23%下落した。売上高の先行きに対する懸念にWBD買収を目指すリスクが加わった。WBDに対するパラマウント・スカイダンスの約1080億ドル規模の敵対的買収提案やトランプ大統領の関与で、買収合戦の懸念や規制当局が買収に反対する可能性が意識され、警戒感は強まっている。

関連記事:パラマウント、ワーナーに17兆円規模の敵対的買収案-Netflixに対抗

  こうした下落局面は、株価は最終的に上昇すると考える個人投資家を呼び込むことが多い。今回の急落を受け、個人の買いは加速しているが、そうした動きの起点は、NetflixがWBDの事業買収を検討しているとロイター通信が最初に報じた10月末だ。バンダ・リサーチのデータによると、個人投資家はそれ以降、Netflix株を5億2000万ドル強相当購入した。

  Netflix株は今年、出足は好調だった。6月末までに50%上昇し、ナスダック100指数の構成銘柄で4位に入っていた。だが下期は流れが反転。30%下落し、最下位から7番目の位置にある。年初来では5.5%のプラスにとどまる。

  向こう1年間の予想利益に基づく株価収益率(PER)は現在31倍。約1年ぶりの割安圏にあり、過去5年平均の34倍を下回っている。

原題:Retail Crowd Is Loading Up on Netflix After $40 Billion Selloff(抜粋)