学校法人「森友学園」への国有地格安売却問題をめぐり、財務省は12日、国会への報告で決裁文書の書き換えを認める方針だが、書き換えの時期や誰の指示によるものなのかなどはっきりしない点は多い。野党は、書き換えの動機を含めて真相解明に全力を挙げるとともに、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の責任を追及する。事態の収拾は見通せず、安倍政権は防戦に追われることになる。財務省は8日、過去に開示した文書と同じ内容の文書の写しを国会に提出。その際、他に文書があるかどうかは明言を避けていた。
12日の財務省の報告では、文書を書き換えたのがいつだったのかがポイントとなる。書き換えが、国有地の約8億円の値引き売却が発覚した2017年2月以降であれば、国会で野党の追及をかわすための隠蔽(いんぺい)の疑いが生じ、違法性も問われかねない。誰が書き換えを指示したのかも不透明だ。財務省の太田充理財局長によると、決裁の責任者は近畿財務局の管財部次長だが、「財務省本省が近畿財務局に変えろと言ったそうだ」(自民党幹部)ともささやかれている。
財務官僚出身の希望の党の玉木雄一郎代表は11日、「(国税庁長官を辞任した)佐川宣寿前財務省理財局長が指示したことは当然考えられる」と記者団に指摘。自民党内にも「佐川氏の決裁なしに書き換えができるのか。財務省は特に組織的に動くところだ」との見方がある。野党は、書き換えに至った背景も重視。森友学園が国有地で計画した小学校の名誉校長を首相夫人の昭恵氏が一時務めていたことが、格安売却に関係したかどうかを引き続き追及する。
財務省は当初の文書から土地取引の「特殊性」などの文言が消えたことを把握しており、玉木氏は11日のフジテレビ番組で「特殊性の背後に何があるのか、政治的関与はあるのかないのか。しっかり調べないと国民のもやもや感は消えない」と指摘した。首相は昨年2月17日の衆院予算委員会で「(国有地売却などに)関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と明言し、自身や昭恵氏の関与を全面否定している。