[ニューヨーク 12日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では、ドルが下落。前週末発表の2月米雇用統計で賃金の伸び鈍化が示されたことを受け、連邦準備理事会(FRB)が年内3回以上の利上げを実施することは困難となる公算が大きいとの見方が広がった。

2月の雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比31万3000人増と、1年7カ月ぶりの大幅な伸びとなる一方、時間当たり平均賃金は前月比0.1%増と、伸びは前月の0.3%から減速し、市場予想の0.2%も下回った。前年同月比でも2.6%増と、1月の2.8%増から伸びが鈍化した。

ウエスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズのシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏は「米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、FRBが利上げペースを加速させる見方を支えるには至らなかった」と指摘。「ドル買いを後押しし、FRBの利上げペースを加速させるには、賃金の伸びが(前年同月比で)3%を超える必要がある」と述べた。

米国が鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税導入を決めたことも、ドルに対する圧迫要因になっているとアナリストは指摘する。トランプ米大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%と10%の関税を課す輸入制限を実施することを正式に発表した。スコシア銀の首席為替ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「ドルの見通しに対し慎重姿勢を維持する」としたうえで、「例え限定的であっても、関税導入は過去においてドルにプラスの効果をもたらしたことはない」と語った。

終盤の取引で、ドル指数.DXYは0.2%安の89.90。ドル/円JPY=は0.4%安の106.37円。対スイスフランCHF=でも0.5%安の0.9470フラン。円を巡っては、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書が書き換えられていた問題の行方に注目が集まっている。ユーロ/ドルEUR=は1.2335ドルに上昇した。

13、14日にそれぞれ発表される2月の米消費者物価指数と米卸売物価指数が注目される。フォレックス・ドット・コムのリサーチ主任ジェームズ・チェン氏は「予想を著しく下回る内容となれば、株価は押し上げられ、ドルに一段の下押し圧力がかかるだろう」との見通しを示した。