att Spetalnick and David Brunnstrom
 

[ワシントン 13日 ロイター] – マイク・ポンペオ米中央情報局(CIA)長官は、重要な国家情勢のブリーフィングを毎朝行い、公の場では称賛し、北朝鮮からイランに至るさまざまな問題についてその強硬路線を支持することにより、トランプ大統領との個人的な絆を育んできたのかもしれない。だが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との前例のない首脳会談を準備する中で、次期国務長官に指名されたポンぺオ氏には、大統領が聞きたがるような意見しか言わない傾向があると、政府関係者やアナリストが危惧している。

一方、元共和党下院議員であるポンぺオ氏の支持者らは、解任されたティラーソン国務長官の後任として上院の承認を得たなら、大統領の信頼、政府での経験、議会や官僚機構の内部知識といった強みを、米国の外交トップという新たな役割で生かすことができる、と主張する。また、ティラーソン氏はトランプ大統領と意見が対立することが多かったが、大統領とウマが合うこともポンペオ氏にとっての強みになるだろう。海外の指導者からも、大統領の代役として信頼性が高いと受け止められる可能性が高い。

とはいえ、大統領に忠実なタカ派のポンペオ氏が、トランプ政権の外交姿勢をさらに強硬にすることで、より穏健な意見が大統領執務室で表明されにくくなり、北朝鮮を相手とするデリケートな外交努力を困難にするのではないかとの懸念も残る。

ポンペオ氏の知性や、より堅実な秘密諜報作戦を主張する点に好印象を抱いている情報機関の当局者もいるが、一部からは、ポンペオ氏が直接大統領に行うブリーフィングを利用して、ありのままの評価ではなく、恣意的に選択した情報を提供してきたとの声も上がっている。例えば、ポンぺオ長官は、2016年の米大統領選に対するロシアの介入に関する情報機関の調査結果を軽視し、イランが2015年の核合意を遵守していることよりも、同国のミサイル開発や中東地域における複数の紛争での役割を強調する傾向があった、と一部当局者は語る。

「ポンペオ氏は、記憶にある限り、最も政治的なCIA長官だった」と政権当局者は匿名を条件に語った。「CIA内部の多くの専門家のやる気をそぐような形で、政治的案件に首を突っ込んでいった」「同省のモラルも打撃を受けおり、それは分析部門から広がり始めた。ここの職員のなかには、ポンぺオ氏が、情報機関がどう評価しているかではなく、トランプ氏が何を聞きたがっているかに合わせて、PDB(大統領向けデイリーブリーフィング)の一部を調整しているのではないかと懸念する声もあった」と同当局者は語った。

だが、国務長官に昨年抜擢された時点で政治経験がなかったビジネス界出身のティラーソン氏とは異なり、ポンペオ氏は中央政界の流儀をよく心得ている。54歳のポンペオ氏は、保守的な傾向も幸いして、連邦議会やホワイトハウスとうまくやっていける可能性が高いと現旧当局者はみている。

<米朝首脳会談>

 ポンペオ氏は元陸軍将校で、ハーバード大学ロースクールを卒業。CIA長官に抜擢される前は、カンザス州選出の下院議員だった。今後は、外交にほとんど関心を示さず、ツイッターでティラーソン氏をけなすことにも躊躇を見せなかった大統領に対処するという任務を負う。最大の課題の1つは、多くの上級外交官の辞任に動揺し、予算削減提案で苦々しい思いを味わっている国務省内の信頼を得ることだろう。

同省の官僚は、大統領が耳を貸す新たなトップを迎えることを喜んでいるかもしれないが、多くのキャリア外交官を無視して、限られた側近に頼る手法が広く批判されたティラーソン氏の流儀を、ポンペオ氏が断ち切ることができるか、注意深く見守ることになるだろう。だが、これまではCIA長官として、北朝鮮に対する軍事的オプションをより真剣に検討するよう進言していたポンペオ氏にとって、何よりも大きな課題は、史上初の米朝首脳会談をまとめるために、自身がどのような役割を演じるかという点だろう。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ大統領の会談は、北朝鮮による核・ミサイル開発計画をめぐる深刻な対立を打開するきっかけとなる可能性がある。トランプ氏は今月、米朝首脳会談の開催に同意し、ティラーソン氏や他の上級補佐官を驚かせた。会談の場所や詳細な時期、この会談に何を期待するかといった点は、まだ明らかにされていない。

「あと数カ月もすれば」北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイルによる米国攻撃の能力を得る、とポンぺオ氏は最近警告していた。「前例のない北朝鮮との首脳会談を控えた国務長官解任は、賢明ではないし、トランプ大統領が戦略的に動いていないことを示している」と、オバマ前政権下の国家安全保障会議で軍縮・核不拡散問題担当のシニアディレクターを務めたジョン・ウルフスタール氏は語る。

「国務省の運営という点では前任者より有能かもしれないが、米朝首脳会談を成功させるために必要な地域・グローバル政策の調整をマネジメントする素養はない」とウルフスタール氏は断じる。昨年4月まで米国における東アジア・太平洋地域担当のトップ外交官で、現在はアジアソサエティ政策研究所に在籍するダニエル・ラッセル氏は、ティラーソン氏からポンペオ氏への国務長官交代は、北朝鮮との対話にプラス材料だと語る。

「北朝鮮側は、トランプ政権内の政治力学をはっきりと見極めている」とラッセル氏。「暴君的リーダーがあらゆる意志決定について最終的な決定権を握っており、部下は指導者の指図に従うのであって、その逆ではない」だが、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の政権下で北朝鮮に対応していた米国の上級外交官エバンス・レビア氏は、ポンペオ氏の「党派心」が懸念の種になるだろうと語った。「ポンペオ氏が、自分の党派心や大統領への個人的忠誠よりも、自身の任務、そして国家への献身を優先してくれるよう祈りたい」

(翻訳:エァクレーレン)