• 米輸入制限で日本から中国への輸出減る可能性あり得る-大和総研
  • 米国から日本に対する黒字削減要求が強くなる-みずほ総研

米中両国が貿易関税で報復措置の応酬を繰り広げる事態となったことは、2国間関係の一段の悪化にとどまらず、世界経済の下押し要因になり、日本の対米・対中貿易にも間接的な影響を及ぼす可能性がある。

米政府は3日、知的財産権侵害を理由に通商法301条に基づき、25%の関税を上乗せさせる中国製品のリスト案を発表した。対象は半導体やリチウム電池などハイテク分野を中心に約500億ドル(5兆3000億円)。これは中国が2日、トランプ政権による鉄鋼・アルミニウム輸入関税への対抗措置として米国からの輸入品に関税を上乗せしたことへの報復だ。

中国は4日も航空機、大豆、自動車を含む106の米国製品へのさらなる報復関税計画を発表した。規模は米の報復措置と同じ、500億ドル相当。この発表を受けて円は一時1ドル=106円台を割り込み、105円99銭を付けた。

大和総研の金子実主席研究員は、報復関税の応酬が連鎖する可能性が高まると、株式市場や世界経済の下押し要因になるとみる。スマートフォンなどの中国製ハイテク製品の多くは日本の部品を組み込んでおり、「米国の中国に対する輸入制限で、日本から中国への輸出が減ることはあり得る」という。

菅義偉官房長官は4日の記者会見で、米国と中国の貿易戦争を防ぐためには、「両国で話し合うことが先決だ」とし、推移を見守りたいと述べた。世耕弘成経済産業相は3日の記者会見で、対抗措置の応酬は「どの国の利益にもならない」とし、自由貿易を堅持する立場から「WTO(世界貿易機関)のルールにのっとった解決を図ることが適切だ」と述べていた。

みずほ総研の菅原淳一席研究員は、上乗せ関税によって中国製品が相対的に割高となることで、日本製品の対米輸出の増加につながり、「トランプ政権からより一層、日本に対する黒字削減要求が強くなる」と分析している。特に農産物や自動車市場へのアクセス拡大に対する要求が強まる可能性があるという。