【4月8日 AFP】シリア政府による化学兵器使用疑惑をめぐり欧米諸国が非難を強めるなか、解けない疑問が残っている。ロシアの支援を受けて内戦で相次いで勝利を収め、外交の舞台にも復帰し始めたバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権がなぜ化学兵器攻撃に踏み切ったのか。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は4日の「恐ろしい化学兵器攻撃」にシリア政府が「直接関わっている」と述べた。同攻撃では子ども27人を含む少なくとも86人が死亡した。
しかし、アサド政権がなぜ化学兵器攻撃を命じたのか、そしてアサド大統領にどれほど近い人物らが関与したのかは不明なままだ。
中東・北アフリカ地域を専門とするコンサルティング企業シェイク・グループ(Shaikh Group)の創業者兼最高経営責任者(CEO)のサルマン・シェイク(Salman Shaikh)氏は「(今回の件は)類例がないわけではない。彼らはかなり前からやっている」と指摘。アサド政権は欧米諸国の「出方を見るために」化学兵器攻撃を行ってきたという。
シェイク氏によれば、今回は大統領の弟で、強い権力を持つマーヒル・アサド(Maher al-Assad)氏をはじめ政権上層部が「パニックに陥っている」兆候がいくつもあり、彼らの承認なしに化学兵器攻撃が実行された可能性がある。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマルコム・チャルマース(Malcolm Chalmers)氏は、化学兵器攻撃は「私たちが繰り返し見てきたパターン」の一部だと語る。
「これは政府の支配下にない地域の士気をくじこうとする常とう手段の一部だ」と同氏は言う。軍事的打撃を与えるというより、「明らかに市民の士気を低下させることを目的としたものだ。アサド政権はシリアで現在掌握しているよりずっと広い地域を支配できるとまだ信じている」
■交渉進めるロシアへの仕返し?
一部の専門家は、今回の攻撃はアサド大統領の許可を得ないまま行われた可能性があるとみている。
「シリアを犠牲にして交渉を進めるロシアへの仕返しとして攻撃を命じた強硬派が政権内にいると思う」と語るのは、ワシントン近東政策研究所(Washington Institute for Near East Policy)のアナリスト、ファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏だ。
「ロシアとアサド政権が冷静さを保てば、7日の米国によるシリア攻撃の後も情勢が激化することはないだろう」とバランシュ氏は言う。「空爆の狙いはアサド政権の行き過ぎた行為に罰を与えるためで、対立が目的ではない」
バランシュ氏はまた、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領はシリアの化学兵器使用に激怒している可能性が高いが、アサド大統領を「支えざるを得ない」と思っているのではないかとの見方を示した。
一方、シリアへの影響力を増大するロシアをねたむイランが、4日の化学兵器攻撃を行ったのではないかと疑う見方もある。
シリア国内で働いているため匿名を希望したレバノン人研究者は「イランの可能性を排除すべきではない」と語った。「彼らは米国とシリアの関係改善を見たくないのだから」 (c)AFP/Sammy Ketz