アメリカなど3か国による軍事攻撃につながったシリアでの化学兵器の使用疑惑を調べるためOPCW=化学兵器禁止機関の調査チームが首都ダマスカスに入りましたが、シリアやロシアの当局者が安全上の問題があるとしたため現場での調査は遅れ、18日にずれ込むことになりました。

シリアの首都近郊にある東グータ地区では、今月7日、化学兵器の使用が疑われる攻撃があり、アメリカなど3か国はアサド政権が化学兵器を使ったとして、14日に限定的な軍事攻撃に踏み切りました。この問題でOPCW=化学兵器禁止機関は14日、調査チームを首都ダマスカスに派遣しましたが、OPCWは16日、シリアとロシアの当局者から安全上の問題があると伝えられ、現場に入れていないことを明らかにしました。これについてイギリスのOPCW代表部は「現場への自由なアクセスは不可欠だ」としてシリアとロシアの対応を批判しました。

また、アメリカのメディアによりますとアメリカの代表は「ロシアが現場に手を加えたかもしれない」と懸念を示したということです。これに対し、ロシア側は調査チームが現場に入れないのは安全を管理する国連の保安部門の同意がないことが原因だと反論しましたが、その後の記者会見で、移動経路の安全を確認したあと調査チームが18日に現場に入る予定だと発表しました。OPCWの調査は、化学兵器が使われたかどうかや、何が使われたのかを特定することが任務で、事実の解明が進むか注目されます。

メディアには現場近くを公開 批判かわす狙いか

シリアでの化学兵器の使用疑惑を調べるため首都ダマスカスに入ったOPCW=化学兵器禁止機関の調査チームの現場調査が遅れるなか、アサド政権は16日、化学兵器が使用された現場近くの施設などを海外メディアに公開しました。取材はアサド政権の担当者の同行のもとで行われ、化学兵器によるとみられる被害を受けた人たちが運ばれたという施設などが公開されました。

ここで手当てを行ったという男性は、当時の状況について「通常の窒息の症状がある人たちが運ばれてきた。火災による煙やほこりが原因で私たちは通常の手当てを行った」と述べて化学兵器が使われたこと自体を否定する説明をしました。

一方で、この攻撃で家族が死亡したという男性は「避難所の地下で家族が口から泡を吹いて倒れていた」と述べて化学兵器の使用をうかがわせる証言もしています。この男性は「攻撃は反政府勢力によるものだ」と述べ化学兵器を使ったのはアサド政権側ではないと主張しましたが、取材をしたAP通信はその根拠は不明だと伝えています。

アサド政権はOPCWの調査が始まる前にメディアに公開することで、批判をかわそうとする狙いがあるとみられますが、住民は証言を強制されているという批判の声も上がっています。