[ラマルベ(加ケベック州) 9日 ロイター] – カナダのシャルルボワで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)が9日閉幕した。通商政策を巡り米国と6カ国の意見対立が解消されないまま、かろうじて首脳宣言が採択されたが、サミットを途中退席したトランプ米大統領がカナダのトルドー首相の発言に立腹、一転して宣言を承認しないとしたことで、G7の結束を示そうとした各国の取り組みは台無しに終わった。
トランプ大統領は9日、G7サミットを途中で切り上げ、米朝首脳会談が行われるシンガポールに向かう途中、急きょ首脳宣言を受け入れないとツイッターで発表。G7の他の加盟国は対応に追われた。
トランプ大統領はまた、カナダ、日本、ドイツに打撃を与える可能性のある自動車輸入関税の導入も示唆した。
トランプ大統領はツイッターで「カナダのトルドー首相は、サミット中はとてもおとなしいふりをして、私が退席した後の記者会見で、『米国の関税は侮辱的』、『(カナダは米国の)言いなりにならない』と発言した。極めて不誠実で弱い奴だ。米政府の関税は、乳製品に270%の関税を課すカナダ政府に対抗する措置だ」と投稿。米政府代表団に首脳宣言を承認しないよう指示したことを明らかにした。
サミットの議長を務めたトルドー首相は会見で、米国がカナダなどから輸入する鉄鋼・アルミニウム製品に高い関税を課したことを受けてカナダ政府が来月から報復措置を講じることに言及。「カナダの国民は理性的だが、言いなりにはならない」と語った。
トランプ大統領のツイートを受け、カナダ首相府は「今回のサミットで成し遂げたことに専念している」とする声明を発表した。
今回のG7サミットはトランプ大統領に終始翻弄された格好となった。
トランプ氏はサミット開幕日の8日にG7へのロシア復帰を提案。トランプ氏自身は他の首脳との論争を否定しているものの、仏政府筋によると、サミットでは米国の貿易相手国を激しく非難したという。そして最後の首脳宣言受け入れ拒否。方針転換で交渉相手に揺さぶりをかけるトランプ大統領の常とう手段といえる。
首脳宣言では、米、カナダ、日本、英国、イタリア、ドイツ、フランスの7カ国の首脳は「自由で公平かつ互恵的な貿易」の必要性と保護貿易主義と闘う重要性で合意したとし、「関税障壁や非関税障壁、補助金(による障壁)の削減を目指す」方針を掲げていた。
サミットの前までツイッター上でトランプ大統領と非難合戦を続けたマクロン仏大統領は、トランプ氏が共同声明を受け入れ拒否を発表する前、サミットは成功したとの考えを示していた。
仏大統領府当局者によると、マクロン大統領はトランプ氏の首脳宣言に関するツイートを把握しているが、コメントは出していない。
欧州のある当局者は「われわれはすべての参加国が合意した宣言を堅持する」と語った。
トランプ大統領は9日、記者団に対し、国家安全保障上の脅威を理由に自動車に輸入関税を課すことは「極めて容易だ」と語った。
米国による自動車や自動車部品への輸入関税導入はカナダの自動車産業に壊滅的な打撃を与えるほか、日本やドイツにも悪影響を及ぼす可能性がある。