アメリカの連邦最高裁判所は、トランプ大統領がテロ対策として出した、中東などからの人の入国を制限する大統領令を支持し、トランプ大統領は「大勝利だ」と歓迎しました。
トランプ大統領は去年、テロ対策の一環として、シリアやイランといった中東などの一部の国からの人の入国を制限する大統領令を出しましたが、「イスラム教徒に対する差別だ」として訴えられ、一時、執行が差し止められるなど議論を呼んできました。
これについて、アメリカの連邦最高裁判所は26日、大統領が国を守るため必要とした場合、入国を制限する権限があるとして支持する判断を下しました。
これを受けてトランプ大統領はホワイトハウスで「アメリカの国民と憲法にとって大勝利だ。われわれはタフになり、安全を確保しなければならない」と述べて歓迎しました。
連邦最高裁判所は、9人の判事のうち1人が死去し、トランプ大統領が保守派の判事を指名したことで、現在は判事の過半数を保守派が占めていて、今回、5対4で、この判断が示されました。
ただ、野党民主党は「トランプ政権による偏見は容認できず、われわれは闘い続ける」とする声明を発表したほか、連邦最高裁判所の前では抗議集会が開かれるなど反発も出ています。
人権団体が厳しく非難
連邦最高裁判所の判断について、国際的な人権団体アムネスティー・インターナショナルのアメリカ支部は26日、声明を出し「安全を求めてアメリカに来ようとする人たちにとってこの憎しみに満ちた政策は大きな災難だ。入国を禁止された人の中にはアメリカが作り出した紛争から逃れようとする人も含まれている。これは、家に火をつけたあと、避難扉の鍵を閉めるような行為だ。反イスラム感情から始まったこの入国禁止令は、人権を尊重するこの国に全くふさわしくない」として強く批判しました。
また、アメリカの有力な人権団体「アメリカ自由人権協会」はツイッターで「今回の判断は連邦最高裁判所が公式に人種差別や排外主義の継続を認めた最初の例ではない。1944年には、国の安全という中身のない主張をもとに、単に出身国や人種を理由に日系アメリカ人を強制収容することを認め、アメリカの歴史上、最も恥ずべき歴史の一つとなった。きょうの判断はそれと同等のものだ」として、連邦最高裁判所の判断を厳しく非難し、市民にデモを呼びかけました。