[ワシントン 17日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は17日、上院銀行住宅都市委員会で半期に一度の証言を行い、米経済について、今後「数年」にわたり労働市場が堅調を維持し、インフレ率もFRBの目標である2%近辺で推移するとの見通しを示した。
一方、質疑応答では、トランプ米大統領による通商政策がすでに米企業に打撃を与えていると懸念する声が上がった。
パウエル議長は「適切な金融政策運営によって、今後数年、労働市場は引き続き堅調で、インフレ率は2%近辺で推移する」と述べた。
その上で、FRBは現時点で「段階的なフェデラルファンド(FF)金利の引き上げの継続が最も適切と確信している」とした。
インフレ率については、FRBの目標に「近い」水準にあり、「最近の指標は心強い内容になっている」と述べた。
さらに、なお低水準にある金利や安定的な金融システム、世界の成長継続、米政府の減税措置、連邦政府の支出拡大などが「引き続き成長の拡大を支援する」との見解を示した。
米経済は今年好調な滑り出しとなった後、成長は加速しているようにみられ、「堅調な雇用の伸びや所得(税引き後)の拡大、そして家計を巡る楽観的な見方が強まったことはここ数カ月、消費支出押し上げに寄与した。企業の投資も健全なペースでの拡大が続いている」とした。
トランプ政権の通商政策を巡り不透明性が漂っているとの認識を示しつつも、貿易戦争が世界の景気回復を頓挫させるリスクが存在するかどうかを想定することは困難との見解を示した。
米経済に対するリスクは総じて「概ね均衡している」とし、「最も可能性の高い米経済見通し」は雇用の伸び継続、緩やかなインフレ情勢、安定的な成長だとの考えを示した。
その後の質疑応答で、ハイディ・ハイトカンプ議員(民主党)は、選出州であるノースダコタ州のエネルギー業界がトランプ政権による輸入関税を受けて高い鉄鋼価格の打撃を受けているほか、農家は報復関税により恒久的に市場シェアを失うと懸念していると指摘。
パウエル氏は、トランプ大統領による関税措置に対する直接的な批判は避けたものの、関税は「絶対的に」間違ったアプローチで、長期化した場合、米国は「全国でその影響を実感することになる」との見方を示した。
パウエル氏の楽観的な証言内容を受け、株式市場はプラス圏で推移。債券価格は下落し、ドルは上昇した。
キャンター・フィッツジェラルドのチーフマーケットストラテジスト、ピーター・チェッキーニ氏は「雇用市場が堅調で、インフレ率が2%近辺で推移する見込みというのが証言のポイントだった。私の見方では、それは年内あと2回の利上げを意味する」と述べた。
今回の証言で、パウエル氏は金融引き締めの適度なペースや個人的な見解を示さなかった。また一部FRB当局者は、インフレを引き続きコントロールできる場合、来年のある時点で利上げサイクルを停止すべきとの考えを示しているが、こうした主張を支持するかにも触れなかった。
現在4%にある失業率については、低失業率が続くことは支援につながるとしたものの、生産押し上げにつながる教育の強化など、より長期的な政策を検討するよう議会に求めた。
パウエル氏は18日に下院で証言を行う。