[ワシントン 5日 ロイター] – 米労働省が5日発表した9月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が13万4000人増となり、市場予想の18万5000人増を大幅に下回った。1年ぶりの小幅な増加にとどまった。ハリケーン「フローレンス」の影響が出たとみられる。一方、失業率は0.2%ポイント低下の3.7%と、約49年ぶりの水準に改善し、労働市場が一段と引き締まっていることを示した。失業率の市場予想は3.8%だった。
時間当たり平均賃金の伸びは前月比0.3%で市場予想と一致したが、前年同月の0.5%を下回った。前年比では2.8%と、9年超ぶりの大幅増となった前月の2.9%から小幅鈍化した。賃金は安定的に伸びており、緩やかな物価圧力を示唆した。景気過熱の懸念が後退し米連邦準備理事会(FRB)が徐々に利上げを進める方針を維持する材料となるかもしれない。7・8月の雇用者数は従来公表値より8万7000人多かったとして修正した。就業者数は、労働人口の伸びに対応するためには月12万人増える必要があるとされている。
キャピタル・エコノミクス(ニューヨーク)のシニアエコノミスト、マイケル・ピアース氏は「フローレンスが9月の就業者数の伸びが弱含んだ一因かもしれない」と指摘した上で「この統計でFRBが徐々に利上げする計画を止める材料はない」と付け加えた。
労働省当局者も、9月中旬にサウスカロライナ州とノースカロライナ州を直撃したフローレンスによって一部の産業で雇用に影響が出た可能性があると指摘した。ただ、実際の影響を算出することはできないという。平均週間労働時間は変わらずの34.5時間。
失業率を算出する材料となる、より小規模の家計調査によると、悪天候のため自宅で待機した人が29万9000人で、9月の例年平均(8万5000人)を上回った。
失業率が3.7%に低下したのは1969年12月以来。FRBが年末までに達すると見込んでいた水準となった。労働市場の引き締まりに伴う労働力不足で、各企業が賃上げを強いられる事例が見られ、一部のエコノミストは統計で示された賃金の伸びが過小評価されている可能性を指摘する。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズの主任エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「規模の大小にかかわらずどの企業も、労働者をつなぎとめるため可能な方策を講じる姿勢がうかがえる」「標準的な指標でこうした(賃金)増加分は反映されない」と語る。雇用統計の内訳は、娯楽・観光が1万7000人減と、17年9月以来のマイナスとなった。小売は2万人減だった。一方、製造業は1万8000人増、建設業は2万3000人増、専門職・企業サービスは5万4000人増加した。政府部門は1万3000人増だった。