今の国会の焦点である、外国人材の受け入れを拡大するための法律の改正案について、政府は、2日の閣議で決定することにしています。

来年4月から、外国人材の受け入れを拡大するため、政府は、2日の閣議で、「特定技能」の「1号」と「2号」という、新たな在留資格を設ける、出入国管理法の改正案を決定することにしています。

「特定技能1号」は、特定の分野で、相当程度の技能を持つと認められた外国人に与えられ、在留期間は、最長で通算5年で、家族の同伴は認めないとしています。

「特定技能2号」は、「1号」を上回る「熟練した技能」を持つと認められた外国人に与えられ、在留期間に上限を設けず、長期の滞在や家族の同伴も可能になるとしています。

また、法案には、与党の要求を踏まえ、法律の施行後3年が経過したら、新たな制度の運用を点検し、必要な措置をとるとする、見直し規定が盛り込まれています。

政府は、受け入れの対象として、農業や介護業など14の業種を検討していますが、改正案には、制度の詳細は明記せず、法案の成立後に、省令で定める方針です。

政府与党は、来週、衆議院で法案の審議に入り、今の国会での成立を目指しているのに対し、野党側は、制度の詳細が詰まっておらず、成立を急ぐべきではないとして、十分な審議を求めています。

支援不十分だと問題相次ぐ懸念も

政府が進めようとしている外国人材の受け入れ拡大について、外国人労働者を支援してきた団体からは、支援態勢が不十分だと現在と同じように、賃金の未払いなどの問題が相次いで起きるのではないかと懸念する声も上がっています。

外国人が日本で働くことができる在留資格の1つに、働きながら技術を学ぶ技能実習があります。名古屋市にある労働組合には、愛知県や岐阜県など東海地方を中心に働くベトナム人やフィリピン人などの技能実習生からSNSを通じて相談が相次いで寄せられています。

相談はことし6月までの2年半の間で86件に上り、内容は賃金の未払いや暴力のほか、セクハラや強制的な帰国など多岐にわたっています。

ことし9月に帰国した30代のベトナム人の女性は愛知県にある服の製造工場で働いていましたが、賃金は十分に支払われず、別の工場に移ったものの、今度は残業代が支払われなかったり、相場を上回る額の家賃を払わされたりしていたということです。労働基準監督署に相談したところ、未払いの賃金など20万円余りが支払われることになったということです。

この女性は「日本の生活は便利で人も親切なので、日本に戻りたい」と話し、新たな資格ができれば、再び日本で働きたいと考えています。

その一方で、技能実習生として働いていた当時を振り返り、「狭い部屋に5人で住んだり、社長から『帰れ』と言われたり、つらかった。昔、働いていたような会社には入りたくない」と話していました。

「愛知県労働組合総連合」の榑松佐一議長は、「外国人材に対する支援態勢が不十分だと、外国人労働者は技能実習生と同じように日本語も話せず、相談する場所もないまま、賃金の未払いや暴力を受け、失踪が相次いでしまうのではないかと思う。まずは受け入れて、あとは出入国在留管理庁で取り締まろうというのはよくない」と話していました。

そのうえで、「人手が集まらない産業の根本的な問題を解決しないまま、外国人を受け入れようというのではその産業のためにもならない。また、私たちが本当に外国人たちと一緒に生活をしようという気がないところに、いたずらに受け入れを拡大するのはトラブルを生むもとにもなる。制度開始が来年4月では間に合わず、もっと議論をすべきだ」と指摘していました。

是正指導の事業所 過去最多に

技能実習生として働く外国人は去年10月末の時点で全国で25万7000人に上っていますが、受け入れ企業で違法な労働条件で働かされるケースが相次いでいます。

厚生労働省によりますと去年、労働基準監督署から是正指導を受けた事業所は全国で4200か所余りと、統計を取り始めた平成15年以降、最も多くなりました。

具体的には、長時間労働など労働時間の違反が1566か所、安全装置の付いていない機械で作業をさせるなど労働安全衛生法違反が1176か所、残業代の未払いが945か所などとなっています。

中には、1か月の残業時間が最長で140時間に上ったり、時給400円ほどで働かされていたりした、より悪質なケースもあったということです。