【パリ時事】フランスで続く反政権デモは、マクロン大統領から譲歩策を引き出した後も収束の兆しを見せていない。中間層に社会保障負担増を強いる一方で、大企業や富裕層を優遇するマクロン氏の経済改革に国民は怒りを爆発。デモ参加者は「もううんざりだ」とマクロン氏の辞任を求めるが、出口戦略は描けておらず、政府側も対応に苦慮している。
【地球コラム】何も変わらぬ「フランス病」~マクロン大統領の書生論通じず~
6週連続のデモの発端は、11月17日に地方で住民らが起こした燃料増税への抗議運動。次第に幅広い層に浸透し、労働条件改善や年金受給額増など要求も多岐にわたっていった。ただ、フランスの貧困率と所得格差は日本よりも小さいのが現実で、不満の根底にあるのは実際の生活の困窮よりも、富裕層との「不公平感」が強いようだ。
当初静観していた政府は12月に入り、燃料増税の中止に加え最低賃金引き上げや減税などの譲歩策を矢継ぎ早に発表した。しかし、マクロン氏の政策で最も批判の強い富裕税廃止の撤回は保留。デモ参加者は仏メディアに「マクロン氏は金持ちのための大統領。不十分だ」と不平をぶつけた。
行き場のない社会の怒りを背景に、極右・国民連合(RN)の支持率が上昇している。RNのルペン党首は昨年の大統領選で、中小企業の減税や低所得者への特別手当などを公約。テレビ局フランス・アンフォが21日に報じた世論調査で、来年5月の欧州議会選の投票先としてRNと回答したのは24%と、政権与党「共和国前進(REM)」の19%を上回った。
欧州議会選は国政に直結しないため、政権与党に対する不満が小党への投票に結び付きやすい傾向がある。ルペン氏の大統領選公約は当時、財源確保が不可能だと批判を浴びた。RNが政権与党に取って代わるのに現実味はなく、不満の一時的な受け皿にすぎないとの見方が強い。(2018/12/23-18:05)