城塚愛也、木下晶代、岩城伸也
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者が8日、英文で発表した声明の要旨は次の通り。
ようやく公の場で話す機会を得られたことに感謝している。最初に私は日産への真の愛情と感謝を表したい。私は日産のために誠実かつ合法的に、そして社内幹部の承認の下で行動した。それも全て日産を支え強化するためだった。
1.外国為替取引
約20年前に日産に入った際、米ドルでの報酬支払いを望んだができないと言われ、日本円での契約を結んだ。円のドルに対する大きな動きをかねて懸念しており、私の生活の基盤はドルなので、2002年から為替スワップ契約を締結してきた。
今回問題になっているのは06年と07年の契約で、06年に日産の株価は1500円前後、ドルは118円程度のレートだった。07年には株価は約1400円、ドルは114円前後だった。
ところが08、09年の金融危機で日産の株価は急落。ドルも80円にまで下落した。スワップ契約を締結していた銀行から直ちに担保を差し入れるよう求められたが、私個人では対応できなかった。
日産を辞めて退職金を受け取り担保に充てることもできたが、日産への道義的責任感がそれを許さなかった。そこで第二の選択肢として、日産に一時的に契約を移し担保を負担してもらった。その後、為替スワップ契約は再び私に移管されたが、これによって日産に損害を与えてはいない。
2.サウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏
ハリド・ジュファリ氏は長年にわたり日産の支援者でパートナーだった。日産の資金調達や、販売業者を巡る複雑な問題の解決に寄与してくれた。サウジ高官との会談の場を設定し、サウジ国内の製造プラント開発の交渉も助けてくれた。ハリド・ジュファリ社への支払いは適正なものだった。
3.金融商品取引法違反での起訴について
オファーをくれた他社に移籍することは選ばなかったが、提案を受け入れていれば支払われていたであろう自分のマーケット報酬については今後の参考のために記録に残した。それは内部のベンチマークであり、法的な効力はない。
検察側の主張とは異なり、私は開示されていない報酬を日産から受け取ったことは一切なく、開示されていない固定額が支払われるよう拘束力のある契約を日産と結んだこともない。退職後の報酬案はいかなるものも内外の弁護士の審査を受けたと私は理解しており、法律に違反する意図が私になかったことを示している。私がきょう死亡した場合、私への退職手当以外のものを相続人が日産に求めることはできるだろうか? 答えは明白に「ノー」だ。
4.日産への貢献
私は人生の20年を日産の経営再建とアライアンスの構築にささげ、昼夜を問わず、世界中を飛び回った。その結果、日産は1999年には2兆円の負債を抱えていたが、2006年終わりには1兆8000億円の手元資金を確保するまでになった。日産、ルノーに三菱自動車を加えたアライアンスは17年には世界最大の自動車グループとなった。日本国内でも多くの雇用を創出し、日産を日本経済の柱の1つに育て上げた。
5.結論
私は無実だ。常に誠実をモットーにやってきたし、これまで不正の嫌疑をかけられたことは一度もなかった。その私が根拠のない容疑で不当に勾留されている。