久しぶりにこのタイトルで原稿を書く気になった。厚労省の毎月勤労統計の不適切調査である。不適切というより統計法というちゃんとした法律に違反する脱法行為だ。犯罪である。何れにしてもこのニュースを最初に見た時の印象は「え!また」というものだった。厚労省といえば過去にも消えた年金問題で大騒動を巻き起こした。最近でも働き方改革に関連した調査の不手際で裁量労働制度の改正案が取り下げられるなど、不祥事の絶えない役所である。今度は毎月勤労統計という雇用保険や失業保険の元になるデータで不適切な行為があった。この役所に適切な運営を求めるのは無理なのか、厚労省と聞いた途端うんざりしてしまうというのが昨今の個人的な印象である。
とはいえ、今回のケースには考えさせられる要素もある。統計職員の大幅な減少だ。元大蔵官僚の高橋洋一氏によると、国の統計職員数は1940人(2018年4月1日)。省庁別では、農水省613人、総務省584人、経産省245人、厚労省233人、内閣府92人、財務省74人、国交省51人などとなっている。厚労省の統計職員は農林水産省の3分の1である。農林水産業が多すぎると言っているわけではない。時代が変わり世相が変わり国民の生活環境が変わる中で、統計職員の配置は旧態依然とした体系のままだ。加えて役所は縦割りである。毎月勤労統計の調査に農水省の統計職員が協力することはないだろう。東京都内には従業員が500人以上の企業は約1500社あるが全数調査は行われず、3分の1程度の調査に止まっていた。
この結果、雇用保険や失業保険の過少受給者が延べ2015万人に拡大した。正常給付に戻すために800億円強の追加支出が必要となり、政府は急遽19年度予算の見直しを行うという始末である。国民からみれば何をやっているのだと言いたくなる。まさに官僚不祥事である。だが、この問題の裏には別の問題が隠されている。真面目にやれば厚労省はブラック企業化するはずだが、全量調査をサンプル調査にこっそり切り替え、当面の人手不足を糊塗していたという事実である。法律違反をこっそりやっていたことが今回の問題の最大ポイントだろう。政府も与野党の政治家もメディアも長年の間そこに気がつかないまま事態が推移した。時代は激しく変化している。できないことをできないと言わない官僚。このままで日本は本当に大丈夫か?厚労省よりも日本の将来が心配になる。
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