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英国の欧州連合(EU)離脱による影響を抑えるため、日産自動車がスポーツタイプ多目的車(SUV)「エクストレイル」次期モデルの生産計画を撤回した英サンダーランド工場は、英自動車産業の復興を物語る象徴的存在だった。
サッチャー政権下の1986年、イングランド北東部に鳴り物入りで生産を開始したサンダーランド工場は、国内最大の規模を持ち、昨年には英国全体の30%に相当する44万2000台を生産。オートメーションと近代的な職場環境を誇る同工場は、2016年には英国の自動車生産台数を過去最高に押し上げる一役を担った。しかし同年実施の国民投票でEU離脱が決定し、サンダーランド市も離脱を支持した。ディーゼル車を敬遠する政策で需要が圧迫される中に、EU離脱を巡る懸念が加わった。

サンダーランドでの「キャシュカイ」と「ジューク」、「リーフ」、高級車ブランド「インフィニティ」のモデルを合わせた生産台数は、昨年に11%減少し、英国全体の不振を反映した。日産が今回計画を白紙に戻したエクストレイルなどディーゼル車の落ち込みは特に著しかった。
サンダーランド工場は7000人以上を雇用し、サプライヤー企業2万8000人の職を支える。メイ政権はかつて、日産による英国投資を保護するという異例の約束をしたことから、裏取引に応じたとの批判を招いた。
英自動車産業に対する昨年の投資は46%落ち込んだ。生産設備の更新など投資計画の決定を見送っている自動車メーカーは複数ある。
日産はサンダーランド工場の従業員が抱える不安を和らげようと、ジュークとキャシュカイについては、計画通り投資を実施する方針だと表明した。
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原題:Nissan Plant in Brexit Blow Makes Three in Every 10 U.K. Cars(抜粋)