[フランクフルト 7日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)は7日、主要政策金利を予想通り据え置いた。また、危機後初となる利上げの時期を来年に先延ばしし、銀行向けの超長期の低利融資を再び実施すると発表した。
米連邦準備理事会(FRB)を含む世界の主要中銀が利上げ休止姿勢を示す中、ECBも予想以上に踏み込んだ措置を決定。今回の決定は、世界的な貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る不確実性のほか、イタリアの債務懸念がいかに欧州全体の経済成長の重しとなっているかを物語る結果となった。
ECBは、政策金利に関するフォワードガイダンスを修正し、「主要政策金利は少なくとも今年末まで、また必要な間、現行水準にとどまると予想する」とした。従来は「少なくとも19年夏にかけて」金利は現行水準にとどまるとしていた。
さらに、期間2年の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の第3弾(TLTROーIII)を9月から実施すると発表した。7200億ユーロの現行の借り入れのロールオーバーを支援し、景気が減速局面にある中で信用収縮が起こるのを防ぐ。
ロイターが報道したように、TLTROーIIIの金利はECBの主要リファイナンスオペに連動する変動金利となる。
市場ではECBは年内は利上げに動かないとの見方がすでに織り込まれていたが、今回の理事会でガイダンスの変更があるとはほとんど予想されていなかった。予想外の動きを受け、債券市場では国債利回りが低下、外為市場ではユーロが下落した。
ドラギ総裁は理事会後の記者会見で「われわれは、脆弱性が継続し、不確実性がまん延する時期にいる」と指摘。ECBは今回の理事会で変更を決定した後も、リスクは下向きに傾いているとのアセスメントを維持したが、ドラギ総裁は保護主義、ブレグジットの先行き不透明性のほか、新興国市場の脆弱性などの外部要因について言及した。
その上で、不確実性が高い中で金融市場に対してガイダンスを提供するECBの取り組みについて、「暗がりの中ではゆっくりと歩を進める。走ることはしないが、動くことはする」とし、「現時点ではわれわれは後手には回っていない。これまでも後手に回っていなかった」と述べた。
ECBは今回発表したスタッフ予想で、2019年のユーロ圏の経済成長率は1.1%になるとし、昨年12月時点の1.7%から引き下げたほか、19年のインフレ率は1.2%とし、前回の1.6%から下方修正した。
主要政策金利のリファイナンス金利は0.00%に、限界貸出金利は0.25%に、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。
ECBは昨年末に量的緩和(QE)を終了させたばかり。今回の理事会で金利を現行水準に据え置く期間を先延ばししたことは、1つの政策転換と見なされる。
INGのエコノミスト、カールステン・ブレゼスキ氏は今回の決定について、「ECBは明らかに先手を打ち、金融政策スタンスの根拠のない引き締めを防ごうとした」と指摘。「ただこの先、経済の著しい下振れに対応するには過去に例を見ない措置が必要となるため、ECBの今回の決定は一種のギャンブルでもある」との見解を示した。