【ワシントン、ソウル時事】ベトナムの首都ハノイで先月末に行われた2回目の米朝首脳会談が不調に終わり、北朝鮮の非核化をめぐる交渉の先行きに不透明感が漂っている。米朝は交渉を継続したい意向だが、非核化の進め方をめぐる溝を埋めるのは容易ではない。加えて会談に前後して北朝鮮が北西部・東倉里のミサイル発射場の復旧を始めていたことが判明。交渉の行方に影を落とす可能性が出てきた。
国務省高官は7日、記者団に「(トランプ)大統領1期目に(非核化へ)到達できる」との認識を示し、交渉継続に意欲を見せた。トランプ氏も8日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との関係は「良好なままだ」と強調した。一方、朝鮮中央テレビは6日、ハノイ会談の様子を放送。物別れに終わったことには触れず、トランプ氏と正恩氏の関係を強調する内容で、対話ムードの醸成を図った。
首脳会談は、北朝鮮が取る非核化の具体的措置とその「見返り」が焦点だった。北朝鮮は寧辺核施設の廃棄と引き換えに、2016年3月以降の厳格化した国連制裁の解除を持ち掛けた。これに対し、米国は寧辺施設以外も含む大量破壊兵器計画の完全放棄を要求、立場の違いが鮮明になった。
首脳会談直後には、米シンクタンクが公開した人工衛星画像で、北朝鮮が廃棄を約束し、すでに一部を解体した東倉里のミサイル発射場で復旧作業が続いていることが判明した。米側は「何が起きているかについて特定の結論には至っていない」(国務省高官)と慎重な構えを示す。ただ、トランプ氏は、北朝鮮が弾道ミサイルを試射すれば「非常に失望する」と表明。北朝鮮側の対応次第では、米側の態度が硬化する可能性もある。
一方、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は「北朝鮮内部で会談結果へ相当な期待があったのに、合意に至らずに失望感が出ている」と報告。制裁解除が実現しなかったことは北朝鮮にとって痛手とみられ、正恩氏の対米戦略練り直しに時間がかかると国情院は分析する。
このため、来月中の実務者協議再開を目指す米国の働き掛けに北朝鮮が応じるかは不明だ。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「非核化するつもりがないなら、制裁強化を検討するだろう」と警告しており、交渉中断が長引けば、米政権内で北朝鮮をけん制する動きが強まる恐れもある。(2019/03/09-00:37)