[横浜市 12日 ロイター] – 企業連合(アライアンス)を組む日産自動車(7201.T)、仏ルノー(RENA.PA)、三菱自動車(7211.T)は12日、提携戦略を決める新組織「アライアンス・オペレーティング・ボード」を設立すると発表した。新組織は、議長にルノーのジャンドミニク・スナール会長が就き、3社の最高経営責任者(CEO)を含む4人を中心に構成する。カルロス・ゴーン前会長に権限が集中していた旧体制と決別し、今後は新組織を通じて3社トップによる合議制で戦略を策定する。
3社は新組織を唯一のアライアンスの意思決定機関、ガバナンス(企業統治)の監督機関と位置づける。新組織での協議は毎月、パリか東京で開催される予定。新組織設立に伴い、これまで3社連合の意思決定やガバナンスの機能を担ってきた日産とルノーの統括会社「ルノー・日産BV(RNBV)」、日産と三菱自の統括会社「日産・三菱BV(NMBV)」(ともにオランダ・アムステルダム)の2社は実質的に機能を停止する方針。
スナール会長と3社のCEOが同日午後、横浜の日産本社で会見した。ゴーン前会長の逮捕後、3社のトップが顔をそろえて会見するのは初めて。
スナール会長は、アライアンスのこれまでの結果を「大いに評価しているが、今は成熟の段階だ」と指摘したうえで、3社が「新しいステップに踏み出す時だ」と述べた。新組織設立の目的は「効率的なオペレーションの推進」であって、新組織で議論する内容は資本構成の変更とは「まったく関係ない」と強調。資本構成の変更や経営統合などは「今日の会見のポイントではない」とも述べた。日産の西川廣人社長兼CEOも、経営統合などの議論が「数カ月後にくることはない」と語った。
スナール会長は、日産とルノーの間で取り交わしている取締役会の構成や資本関係などに関する協定「RAMA(アライアンス基本合意書)」については「維持し、修正は検討していない」と語った。
西川社長は、RNBVは「やや偏ったパワーバランスで構成されていた」と振り返り、新組織設立で「(3社による)イコール・パートナーシップが実現した」と強調。自身の課題であるアライアンス安定化、ガバナンス刷新、業績安定化のうち、新組織設立はアライアンス安定化という点で「非常に大きな一歩」であり、「ウィンーウィンの精神が名実ともに形になる」と評価した。
ルノーのティエリー・ボロレCEOは、新組織では「権限と責任の委譲がはっきりする」と説明。旧体制では「多くのレイヤーがあり、時間がかかっている。新組織では複雑性をなくし、できるだけ早く成果を出せるようにする」と語った。
三菱自の益子修会長兼CEOは「アライアンスの基本精神に戻り、真摯(しんし)に話し合えば、困難な課題も解決できる」と新体制に期待を寄せ、自動車産業が大きな変革期にある中、新組織設立を通じて「3社がそれぞれの強みを生かして協力し合い、業界をリードすることで今後も持続的な成長を実現できる」と述べた。
益子会長はまた、NMBVについて「今の形での継続には無理がある」というのが西川社長との共通認識であり「日産と協議しながらNMBVの今後の形を検討していく」と述べた。
RNBVに関しても、西川社長はスナール会長と議論していく意向を示した。
NMBVとRNBVは、ゴーン前会長に関連した不透明な資金の流れなど不正の温床となった可能性があり、現在も内部調査が進んでいる。
<スナール会長、日産会長に就任せず>
スナール会長は、現在空席となっている日産会長に「なろうとは思っていない」と明言した。これまで日産の筆頭株主でもあるルノー側が日産会長にはルノー会長が就くことを強く要望。これに対し日産は、ガバナンスの観点やゴーン前会長に権力が集中し、不正を招いたとの反省から、難色を示してきた。ルノー側が日産の意向を汲み、譲歩した格好だ。
新組織設立に関する3社の覚書の中では、「ルノーの会長が日産の取締役会副議長(代表取締役)に適した候補であると想定される」ということが明記された。スナール会長自身も「取締役会の副議長には適していると思う」と会見で語った。
日産は現在、外部の有識者からなる委員会がまとめるガバナンス改革への提言を待っている。
西川社長は、同社が取り組んでいるこうした改革の意向を尊重し、ルノーの会長が日産の会長であることを「あえて求めない」というスナール会長の姿勢に「たいへんありがたい」と謝意を述べた。
スナール会長は、4月8日に開催される予定の臨時株主総会で、日産の取締役に選任される見通しとなっている。
白木真紀 編集:田巻一彦