• 金融政策運営は7対2で現状維持-片岡・原田両審議委員が反対
  • 長期金利0%程度、短期金利マイナス0.1%の長短金利操作を維持
日銀の黒田総裁
日銀の黒田総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行は15日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を7対2の賛成多数で決定した。片岡剛士、原田泰両審議委員が反対した。景気は「緩やかに拡大している」との見方は維持したが、「輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられる」との文言を加え、総括判断を下方修正した。

  景気の個別項目では、海外経済は「総じてみれば着実な成長が続いている」から「減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している」に、輸出は「増加基調」から「足元では弱めの動き」に、鉱工業生産は「増加基調」から「足元では弱めの動きとなっているが、緩やかな増加基調」にそれぞれ下方修正した。輸出を下方修正したのは2016年3月以来、生産は15年9月以来。

  先行きについても、景気は「緩やかな拡大を続ける」との見方を維持したものの、「当面、海外経済の減速の影響を受ける」、輸出は「当面、弱めの動きとなる」との表現を加え、下方修正した。

boj
日本銀行Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  政策運営に関しては、長期金利がゼロ%程度で推移するよう国債買い入れを行い、ある程度の金利変動を許容する方針と、マイナス0.1%の短期金利を維持。指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も従来通り。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」とのフォワードガイダンス(政策金利の指針)も変更はなかった。

  片岡委員は反対理由として「先行きの経済・物価情勢に対する不確実性がさらに強まる中、金融緩和を強化することが望ましい」ことを挙げ、前会合までの「10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう」との表現は取り下げた。

IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミスト
景気減速への懸念は示したものの、すぐに動く状況ではない日銀に政策手段が限られている中、景気後退まで行っている状況でない日銀には価格上昇のモメンタム、賃金上昇含めたサイクルが維持されているかが重要で、その点は大きく変わっていない今後も海外の減速感をにらみながらの展開になるだろう
長短金利操作(賛成7反対2)
短期金利:日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%適用長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう国債買い入れ。金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得る
資産買い入れ方針(全員一致)
ETFとJ−REIT:保有残高がそれぞれ年間約6兆円、約900億円相当で増加するよう購入。市場の状況に応じて上下に変動し得る
フォワードガイダンス
10月予定の消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利水準の維持を想定

  ブルームバーグがエコノミスト46人に行った事前調査では全員が現状維持を予想していた。午後3時半に黒田東彦総裁が定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は3月26日、「議事要旨」は5月8日に公表。