日産自動車の企業統治改革を検討してきたガバナンス改善特別委員会が27日発表した報告書では、前会長カルロス・ゴーン被告が権限を自身に集中させる一方、疑義を唱える役職員を退職に追い込むなどして独裁体制を築いていった状況があらわになった。ゴーン被告から「何も言わない監査役を探してこい」と指示された社員もいたという。

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 報告書は、1999年に日産再建のため仏自動車大手ルノーから送り込まれたゴーン被告について、「日産の破綻を救った救世主として神格化が進み、その活動が不可侵領域化した」と指摘した。

 ゴーン被告は自身や経営幹部らの人事や報酬を決める権限を握るとともに、報酬隠しや資金流用などの不正を発見し得る管理部門を、前代表取締役グレッグ・ケリー被告ら側近で固めて情報を管理。監査部門の追及は、ケリー被告が「CEOの決定だ」とはねつけ異論を封じたという。

 特別委は、現役の会長が金融商品取引法違反や特別背任の疑いで逮捕されたことについて「典型的な経営者不正」だと指摘。一方で、「経営者が私的利益を追求している点で、『会社のため』ということを不正を正当化する根拠としていた過去の経営者不正とは根本的に異なる」と悪質さも指摘した。

 日産は特別委の提言を受け、社外取締役だけで構成する委員会で役員報酬を決める仕組みに変更するなど再発防止に取り組む。だが、報告書であぶり出されたゴーン被告の独裁ぶりの異常さとともに、それを防げなかった日産のけん制機能のもろさも際立つ。日産が信頼に足る企業統治を回復できるかどうかには厳しい目が向けられそうだ。