日米の新たな貿易交渉が、日本時間の16日、ワシントンで始まります。当面の交渉対象とする範囲などが議論される見通しで、物品の関税以外の交渉分野をできるだけ絞り込みたい日本側に対し、アメリカ側がどのような出方をするのかが焦点です。
初会合は、日本時間の16日未明からワシントンで開かれ、茂木経済再生担当大臣とライトハイザー通商代表が出席します。
今回の貿易交渉をめぐって、去年9月に首脳間で合意された共同声明では、TAG=物品貿易協定の締結に向けた物品関税の撤廃・削減の議論に加え、サービスを含む「早期に結果を生じえる」ほかの重要な分野についても、当面の交渉対象とするとされています。
初会合で日本側は、共同声明の内容に沿って交渉を行うことを再確認し、早期妥結を目指す観点からも、物品の関税以外の交渉分野をできるだけ絞り込みたい考えです。
一方、トランプ大統領は、先月、大統領経済報告で、幅広い分野を対象とするFTA=自由貿易協定の締結を目指す考えを示していて、初会合では、アメリカ側が当面の交渉対象としてどのような出方をするのかが焦点です。
また、茂木大臣は、先に、両国がそれぞれ重視する物品関税の項目についても議論が行われるという見通しを示していて、日本側は農業や自動車などの分野でのアメリカ側の厳しい要求を警戒しています。
去年9月の共同声明
日米両政府は、去年9月の首脳会談で、両国間の貿易・投資のさらなる拡大に向けて2国間交渉を開始することを盛り込んだ共同声明を取りまとめました。共同声明には、交渉のおおまかな進め方が明記されています。
第1段階として、農林水産品や自動車など物品関税の撤廃・削減を内容とするTAGの締結に向けた交渉、また、サービスを含む「早期に結果を生じえる」ほかの重要な分野についても交渉を開始するとしています。
そして、TAG交渉などの議論が完了したあとに、第2段階として「ほかの貿易・投資の事項」についても交渉を行うとしています。
このほか、共同声明には、関税の交渉にあたっては「お互いの立場を尊重する」としたうえで、日本側がTPP=環太平洋パートナーシップ協定など過去に締結した経済連携協定の水準を上回る農林水産品の関税の引き下げには応じないことが盛り込まれています。
また、声明の最後には「信頼関係に基づいて議論を行い、協議が行われている間、共同声明の精神に反する行動をとらない」などと明記されています。
これに基づいて日本政府は、アメリカが検討する自動車などの関税引き上げ措置が交渉の継続中に発動されることはないと説明しています。
トランプ政権の対日貿易姿勢
アメリカのトランプ大統領は就任直後のおととし1月、TPPからの離脱を決めました。TPPのような多国間の枠組みではなく、二国間の交渉でアメリカにとって有利な貿易協定を結び、貿易赤字の削減などにつなげるねらいがありました。
日本との間でもTPPの代わりに二国間のFTA=自由貿易協定を結びアメリカ産の農産物の輸出拡大などを目指す意向をあからさまにしてきました。
ただ日本は、TPPのような多国間の自由貿易のルールが中国に対抗するうえでも重要だとしてアメリカにTPPへの復帰を呼びかけ、日米二国間のFTAには一貫して慎重な姿勢でした。
しかし保護主義的な政策を次々と打ち出すトランプ政権は去年5月、貿易赤字削減のために自動車に高い関税をかけて日本車などの輸入を制限する措置を検討すると発表。自動車産業は日本経済の根幹で、仮に関税が上乗せされれば深刻な影響が及びます。
このためアメリカの強い意向も踏まえ、去年9月の日米首脳会談で二国間の貿易協定の交渉を始めることで合意しました。
交渉を行っている間は日本車への関税の上乗せは行わないことを確認していますが、トランプ政権は、交渉が不調に終われば関税をかける構えをちらつかせながら日本側に譲歩を迫る可能性があります。