スマートフォンでQRコードを読み取って店頭で支払いできるサービスを、銀行など金融機関が主導して10月にも始める。ペイペイやラインペイなどIT企業主導の決済サービスが広がるなか、利用者の預金口座を持つ金融機関の強みを生かし、巻き返しを図る。
新サービスの名称は「Bank Pay(バンクペイ)」。利用者はまず自分のスマホで専用アプリをダウンロードし、口座番号などを登録。本人確認の手続きを終えれば、加盟店でスマホを使ってQRコードを読み取ったり、スマホ内のQRコードを店側に示したりして買い物できる。代金は買い物のたびに預金口座から引き落とされる。
サービスを始めるのは、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など主要行や地方銀行。各行が加入する「日本電子決済推進機構」が運営する。信用金庫なども加わり、参加行は1千社以上になる見込みだ。
新サービスでは、キャッシュカードを使ってお店で支払いできるデビットカード(Jデビット)の既存のしくみを生かす。毎月まとめて引き落とされるクレジットカードと違い、Jデビットは預金残高以上に使いすぎる心配のないことが売りの一つ。しかし、読み取り専用端末が必要で利用店舗が広がっていなかった。
QRコード決済と組み合わせれば、加盟店は専用端末が不要で、カード会社より安い手数料で使える。銀行業界は低コストを売りに、キャッシュレス対応が済んでいない小規模な商店や飲食店に利用を呼びかける。
QRコード決済は、ペイペイが大規模なポイント還元を展開するなど、IT企業のサービスが先行する。金融業界は利用者の口座と直結する強みを生かしたい考え。多くのIT企業のサービスは、口座から現金をあらかじめチャージする必要などがあったが、バンクペイだとそのまま引き落とされる。既存のサービスと比べて、利便性をどこまで高められるかが普及のカギになりそうだ。(柴田秀並)