27日の日米首脳会談を前に、麻生副総理兼財務大臣はアメリカのムニューシン財務長官とワシントンで会談しました。アメリカ側は意図的な円安誘導を禁止する「為替条項」を貿易協定に盛り込むよう求めたとみられますが、麻生副総理は為替の問題は貿易政策とは切り離すべきだと主張し、日米の財務相どうしで協議を続けることになりました。
会談は、日本時間の午前2時すぎから行われ、「為替条項」の扱いが焦点になりました。
「為替条項」は輸出を有利にするために、自国の通貨を意図的に切り下げるのを禁止する取り決めで、ムニューシン財務長官は、日米の新たな貿易協定に盛り込むよう求めたものとみられます。
これに対し麻生副総理は、為替の問題は貿易政策と切り離すべきだと主張し、双方の溝は埋まりませんでした。このため、貿易協議に関連した為替の取り扱いについて、今後も日米の財務相どうしで協議を続けることになりました。
為替条項をめぐってアメリカは、法的拘束力の強い貿易協定に盛り込みたい考えですが、日本としては、過度な円高になった場合の為替介入など政策が縛られるおそれがあり、受け入れられないという立場です。
今回の会談は、双方が互いの立場を述べ合うにとどまりましたが、来年の大統領選挙に向けてトランプ政権が、「為替条項」を協定に盛り込むよう強硬に迫ってくるおそれもあるだけに、日本にとって予断を許さない状況が続きそうです。
為替条項とは
「為替条項」は、輸出の競争力を高める目的で、為替介入などを行い、自国の通貨を安く誘導するのを禁止する取り決めです。
アメリカのトランプ政権は、各国との貿易協定に「為替条項」を盛り込むことで、相手国の輸出競争力が高まるのを防ぎ、巨額の貿易赤字の解消につなげていきたい考えです。
トランプ政権は、去年、メキシコやカナダとの3か国の間で見直しに合意した貿易協定にこの為替条項を盛り込んだほか、中国との貿易交渉でも同様の要求をしています。
日本との貿易協定でも、ムニューシン財務長官が、円安誘導を防ぐため、為替条項を盛り込みたいという意向を繰り返し示しています。
一方、日本は、過度な円高になった際の為替介入が制約を受けるおそれもあることから、こうした条項を、法的拘束力の強い貿易協定に盛り込むことには否定的で、これまで日本が各国と結んでいる貿易協定にも、盛り込まれていません。
アメリカが離脱する以前のTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉でも、為替に関するルールは、協定そのものには盛り込まず、法的拘束力のない「共同宣言」の中に入れるにとどめていました。
日本としては、日米の新たな貿易交渉でも、協定そのものに為替条項を盛り込むことは反対の立場で、今後の交渉で、アメリカ側と一致点を見いだすことができるのか注目されます。
麻生氏“為替の問題は貿易政策とは切り離すべき”
麻生副総理兼財務大臣は、ムニューシン財務長官と会談したあと、記者団に対して「為替については2017年2月の日米首脳会談で合意したとおり、貿易協議に関連した為替の取り扱いについて、ムニューシン財務長官との間で議論していくことを確認した」と述べました。
そのうえで麻生副総理は「私からは日本の立場として貿易政策と為替政策をリンクするような議論には賛同しかねると申し上げた」と述べ、為替の問題は貿易政策とは切り離すべきだと主張したことを明らかにしました。
米は為替問題に言及せず
アメリカの財務省は、25日、ムニューシン財務長官が、麻生副総理兼財務大臣と会談したと発表しました。
会談では、日本とアメリカの経済関係の重要性について改めて確認したほか、中国や北朝鮮、それにイランへの制裁といった重要な課題について意見を交わしたとしています。
ただ、今回の会談で焦点のひとつになっていた為替の問題については、アメリカ財務省の発表や、ムニューシン財務長官のツイッターへの投稿では、言及していません。