【ニューヨーク時事】トランプ米大統領が中国に対する制裁関税を25%に引き上げ、対決姿勢を強めた。米景気は好調さを維持しており、互いの輸入品に高関税をかけ合う「関税合戦」に耐えきれず先に折れるのは中国と踏んでいるようだ。ただ、これまでの度重なる制裁関税の発動で、製造業を中心に貿易戦争の負の影響が広がり始めている。

 「(対中協議を)急ぐ必要はまったくない」。トランプ大統領は10日、関税引き上げを受けてツイッターに投稿し、余裕を見せた。1~3月期の米成長率は3.2%と潜在成長率(2%弱)を大幅に上回る。失業率は約半世紀ぶりの低い水準で、米株価は史上最高値圏を維持。インフラ投資や大型減税で景気下支えに必死の中国とは対照的だ。

 今回の関税引き上げは、家電や家具など広範な品目に及び、個人消費への影響は避けられない。米国内総生産(GDP)を0.4%程度押し下げるとの試算もある。それでも「中国からの譲歩を得るため、政権は多少の痛みも覚悟している」(エコノミスト)とされる。

 ただ、表面上は堅調な米経済も、製造業はすでに減速感が鮮明だ。再三の追加関税の発動に伴い、建設機械大手キャタピラーでは原材料コストが3億5000万ドル増加。工業・事務製品大手スリーエムは中国市場の不振で2000人の人員削減に踏み切る。

 貿易交渉で攻勢を強める大統領は、現在制裁から外れている約3000億ドル相当分にも25%の追加関税をかける手続きを開始。双方がすべての輸入品に25%関税を発動する事態になれば、「短期間で米株価は1割下落し、世界は景気後退に陥る」(米投資銀行)との予想もある。