【北京時事】中国の4月の小売売上高は前年同月比7.2%増と、ほぼ16年ぶりの低い伸びにとどまった。景気底入れの兆しを追い風に米国との貿易協議で強硬姿勢に転じた習近平指導部にとって、消費の減速は大きな「誤算」。今後の協議では態度軟化を余儀なくされる可能性もある。
大筋合意が視野に入っていた貿易協議は今月初め、中国が合意文書案の大幅修正を要求して暗礁に乗り上げた。土壇場の強硬姿勢には、景気の持ち直しを見越し、国内で弱腰批判を招く恐れのある対米譲歩の合意を急ぐ必要が薄れたとの判断があったとみられている。
1~3月期の中国の成長率は6.4%と、3四半期続いていた減速が止まり、底入れへの期待が高まった。対米摩擦が激化する中、中国は経済成長をけん引しているのは外需ではなく内需、特に消費だと主張。「消費『メインエンジン』、推進力は強力」(人民日報)など、メディアを総動員して国民の不安や不満を打ち消し、景気を浮揚させようと努めてきた。
しかし、15日に発表された4月の統計は小売売上高を筆頭に軒並み低調。先行きは再び不透明になった。景気減速懸念は根強く、対米摩擦も消費者の心理や実体経済に影響を及ぼしているもようだ。
習指導部は対米協議の行方をにらみつつ、消費者心理への対処や一段の景気対策への取り組みを迫られている。