ファーウェイの任正非CEO。1944年中国・貴州省生まれ。山間部の町の高校から重慶建築工程学院(現・重慶大学)に進学。土木工学関係の仕事に従事した後、工場建設担当として人民解放軍工兵部隊に入隊。1987年にファーウェイを創業した。
中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の任正非CEOは5月18日、深セン市の本社でBusiness Insider Japanなど日本メディアの取材に応じた。
4月下旬には予定されていた取材だったが、折しもアメリカのトランプ政権が5月17日にファーウェイへの輸出規制を発動。その後、メディアに対して初めての取材となった。
アメリカの措置の影響からトランプ大統領に対する怒り、さらには5Gという技術の本質まで、大きな身振りを加えながら任氏は2時間近く語り尽くした。
アメリカによる輸出規制の影響は
—— 私たちがちょうど深センに到着した日に、アメリカは米企業へのファーウェイ製品の輸入と、ファーウェイへの輸出規制を発動した。この動きをどう見ているか。またファーウェイにはどんな影響があるか。
世界経済は間違いなくグローバル化に向かっていて、そんな中では世界は一体となる必要がある。ある国が閉じこもって何か製品を作ろうとした場合、その製品の生産規模は大きくならず、コストがかさむ。すると社会のニーズを満たせないものになる。
経済のグローバル化とは、それぞれの地域で最も強いものを活かすということだ。例えば、ねじでは、日本製品を好んで使う。他の国で日本のような高品質のものを作るとコストが高くなる。
グローバル化に逆行すると経済は混乱する。とくに日本のような国は。中国市場はまだ成長途上で、日本はこの市場を必要としている。アメリカの経済にとっても、中国市場を諦めることがいいことだとは思えない。
スマホ生産への影響は限定的
REUTERS/Charles Platiau
—— アメリカが2018年に成立させた「国防権限法」(米政府機関がファーウェイやZTE[中興通訊])の機器やサービスを使うことを禁止する法)に対しては、米憲法違反だとして訴訟を起こしているが、今回もそのような措置をとる可能性はあるか?もしくは中国政府と協力として国際的な仲裁を求めるのか。ZTEのように経営陣を刷新したり、アメリカの監視を受け入れたりする和解の道を選ぶのか。
我々はZTEのような道は選ばない。中国企業というだけで同じように見られているが、まったく違う企業だ。
国際的な仲裁も求めない。国際的な仲裁のためには国を動かさなければならないが、我々一企業にはそんなことはできない。国としてやらなければならないことは他にあるだろう。
アメリカでの訴訟については、まだ考えはまとまっていない。
—— アメリカから部品の半導体の供給がストップした場合、ファーウェイのスマホ生産への影響は?
影響はあると思うが、一部に限られ、大きなものにはならないと思う。
ただ、これまでのような高い成長は望めない。2019年の第1四半期(1〜3月)の売り上げは前年比で39%増だったが、4月になって25%に鈍化した。(輸出規制の影響で)通年で20%増には届かないだろう。
—— (米企業の)クアルコムからの半導体の輸入がストップしたら、自社で半導体を生産するのか?
クアルコムから供給してもらう必要はない。クアルコムには特許料を支払っているのだから(自社での独自開発を進めていく)。
米企業への売却まで考えていた
日本メディアの取材に応じた場所は、任氏が妻の要請で作ったという目黒雅叙園を模した部屋。任氏の娘の第2外国語は日本語で、一家で日本に行くとドラッグストアに行くのが好きだという。
—— 半導体など核心的な部品について、今回のアメリカに措置を見越して準備を進めていたのか。準備をしていたとしたら、自社での開発やアメリカ以外からの調達をどう考えているのか。
ファーウェイにとって2002〜03年が転換点だった。その頃から我々にはだんだん高みに登っていく予感があった。
当時はお金もストックの食料もなかった。かたや我々とは反対の方面から山に登ってくるチームは、寝袋も食料もたっぷり用意していた。お互いに別々の方向から登ってきて山頂に着けば、必ず争いが起こる。そのときファーウェイは負けてしまうと考えた。
それで2003年、100億米ドルでアメリカの企業(米通信大手のモトローラ)にファーウェイを売却することを考えた。ほぼすべての交渉を終え、必要な契約にもサインも済み、お祝いの準備もできていた。
だが、ちょうどその週に新しく就任した米企業の代表取締役がこの交渉を否定し、売却は白紙に戻った。のちにエリクソンのCEOは、この米企業のナンバー2から「またとないチャンスを逃してしまった」と聞いたそうだ。
私たちは当時からいつかアメリカと高い山の上で一戦交えることになると考え、自社の売却を通じて“アメリカの帽子”をあえてかぶろうとしていたのだ。アメリカの帽子をかぶっても働くのは中国人というやり方を考えていた。そこまで考え、アメリカとの激しい争いを避けようとしていた。
旅行業への参入も考えていた
顧客などを招く施設内には京都の街並みがあった。一見映画のセットかと思うほどの精巧な作りで、「鴨川おどり」のポスターまで取り寄せて貼ってあった。実際にここでは寿司や鉄板焼きなどが招待された顧客などに供されるという。
実際、売却後の計画まで考えていた。例えば、中国のトラクターは当時オイル漏れするなど欠陥品が多かったので、大小さまざまなトラクター会社を買収し、我々の技術で1000ドルのトラクターの品質を向上させれば2000ドルで売れると考えたりもした。我々は世界で最も大きなトラクター会社になっていた可能性もある。
旅行業に参入しようという考えもあった。四川省、チベット、雲南省などゴールデントライアングルと呼ばれている地域にスイスのような高山列車を走らせることも考え、中国の鉄道部長とも話をしていた。鉄道部からは電車はなんとかするが、鉄道を引いてくれと言われ、土地の買収まで指示していた。
当時我々にとって100億米ドルという形は大金だった。それがあれば、我々は旅行業に転換しても大きな成功を収められていたと思う。
しかし、売却がいったん白紙になり、経営幹部で自分たちの会社の将来について話し合い、結果として全会一致で売却しないことを改めて決めた。
だがその道を選ぶなら10年後、必ずアメリカと争うことになる。そのときのために備えておいたほうがいいとも話し、準備を始めた。
社内にひっそりと準備チームまで作った。その仕事にはなかなか光が当たらなかったので、チームのメンバーの中には社内で自分たちの仕事が重視されていないのでは、と私に恨みつらみを言ってくる社員もいた。そのぐらい、その仕事は社内でなかなか理解されなかった。
とはいえ、あのとき全会一致で、会社を売却せずに通信産業で頑張っていこうと決めたのだ。相手も強いので、必ず勝てるかどうかはわからない。でも、登ってきた山道を引き返すことだけはやめようと話した。
「トランプは偉大な大統領になる機会を逃した」
REUTERS/Dado Ruvic/Illustration
—— 以前インタビューで、トランプ大統領を「偉大だ」と称されていたが、改めて今どう思うか。
減税をした点では、今でも偉大な大統領だと思っている。減税は産業の発展にはプラスだからだ。その評価は今でも変わらない。
だが、彼は間違ったことを一つした。今日はある国を脅し、次の日は別の国を脅す。そんな状態で誰が投資をするリスクを犯せるのか。このやり方はよくない。
将来5Gネットワークをアメリカで構築するのかと聞かれることがあるが、今はアメリカから呼ばれても行かない。突然逮捕されるようなことがあれば、数十億ドルの投資が無駄になるのだから。
トランプ大統領の人格のせいで、アメリカでは株も下がっている。彼は偉大な大統領になる機会を逃してしまった。
—— アメリカから狙い撃ちされるのは、ファーウェイだからかそれとも中国企業だからか。中国企業であることで損をしているか、得をしているか、どちらだと思うか。
以前、オルブライト元国務長官と3時間話したことがある。当時はまだ制裁はなかったが、アメリカの先端技術もキーになる部品も使えない我々の苦しみはよくわかってもらえた。その上で、「ファーウェイは偉大だ」と言ってもらえた。エレベーターまで見送りしてくれて、「よくわかった」と何度も言ってもらった。
そうした厳しい状況の中でなぜ我々は成長できたのか。それは、(進出先の)政府から正式にダメだと言われたことはやらない姿勢を貫いてきたからだ。
オーストラリアやアメリカには、頼まれても行かない。我々は「いらない」と言われているところに無理にサービスを押し付けにはいかない。
また、中国企業であることが損か得かはお答えできない。よくわからないからだ。
日本、中国、韓国で自由貿易区域を作ろう
ファーウェイが建設を進める松山湖キャンパス。深センから車で1時間半の東莞市にある。総面積は120万平方メートル、ヨーロッパをイメージしたお城風の建物が並ぶ。こちらは研究開発部門のみで将来、2万5000から3万人の社員が働く予定。
—— 今後、日本企業とはどんな関係を築いていきたいか。日本企業はすでに多くの部品をファーウェイに供給しているが。
日本企業とは互換性が非常に高い。日本は基礎研究に強く、材料化学分野や部品分野で世界で最も強い国。将来の世界はインテリジェンス(が重視される)世界になる。感知すること、センシングが何より大切になり、そのためにセンサーが重要になる。その基本はマテリアル(素材)だ。
5Gが導入されれば、4000、5000億米ドルの産業が生まれる。優れた日本製品はどんどん使われていくだろう。日本企業とファーウェイは山を一緒に登る仲間。我々は多くの日本製品を使って登っていける。一緒に情報産業を大きくしていきたい。
アメリカの禁輸措置後、麻生太郎財務相の「ファーウェイに部品供給をしている日本企業があり、日本にも影響が出ることを覚悟しなければならない」という発言(5月17日)には感謝している。非常に大きな圧力の中であのような発言をしてくださったことは偉大だと思う。
ファーウェイは小心者の会社で、何事もこっそりこっそりと進めていくのが常だった。だが、アメリカから圧力を受けて、背筋が伸びた。
日本、中国、韓国は自由貿易区域を作らなくてはならないと思う。日中韓間で自由貿易協定(FTA)が結べれば、そこにASEANやEUも入ってくる可能性がある。中国政府が進める一帯一路計画と結びつけば、中央アジアとのつながりも出てくる。そういう大きな経済圏の中で日本は間違いなく大きな役割を果たすだろう。
中国はその後に続く国。中国は制度上整えないとならない部分がまだまだある。お互いの協調はビジネスでなければならず、覇権が先立つものではない。
次世代の若者に国境という概念は存在しない
ファーウェイの5G基地局。このタイプで重さ40キロ。男性であれば1人で取り付けが可能になるため、設置コストを格段に下げられるという。韓国ではこの5カ月で18000ものファーウェイ製5G基地局の設置が進んだという。
—— 世界はまた一つにまとまれると思うか。
鉄道で言えば、各国がそれぞれ鉄道の規格を主張した結果、国によってレール幅が異なってしまい、貨物輸送が不便を被っている。
世界はつながっていないといけない。3Gから4Gに移行するときも、3つのタイプがあったためにコストが高くついてしまった。5Gなってようやく一つの基準にまとまった。
5Gはどんな価値を提供するのか。一人ひとりのビットあたりのコストは10分の1から、もっと言えば100分の1になっていくだろう。そうなれば経済的に豊かでないどんな地域でも、人々は教育を受けることができる。小さな子どもたちは世界中を見られるようになる。
ネットワーク技術の発展は人類の発展を加速させる。ネットワークを通じて、人類には大団結がもたらされるのではないか。
数日前ある政治家に聞かれた。「次世代の若者たちの民族意識、ナショナリズムは強いのか」と。私は、次世代の若者には国境という概念はもはや存在しないのではないかと思っている。
また別の機会にはアメリカの有名な記者が教えてくれた。アメリカの大学に通う娘にはグローバルで数万人のファンがついているらしい。異なるイデオロギーでも、同じような意識の人はつながるのだ。
世界の7〜8割の人たちは経済的に貧しい地域に住んでおり、閉鎖的なネットワークが作られると、こうした人たちがマーケットから締め出されてしまう。
5Gは人類に幸福をもたらす。そのためにネットワークは2つも要らないし、つながっていないといけない。そうした意味でも、私は世界が分断に突き進むことはないと思っている。
孟晩舟はプライドや自信を失っていない
5月8日、ボディーガードとともにカナダ・バンクーバーの自宅を出る、ファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者。
—— イランとの違法な金融取引に関わった容疑で、ファーウェイ副会長で最高財務責任者の孟晩舟氏はカナダで逮捕・起訴された。今の率直な気持ちは?
孟は法律違反はしていない。アメリカの指摘には根拠がないが、最終的には法廷での判決によって完結するだろう。
孟自身の状況はそれほど悪くない。軟禁されているが自分の空間があり、この時間を使って博士号を取得しようとしている。プライドや自信を失ったわけでもない。長い道のりにはなるだろうが、彼女はそれに耐える我慢強さを持っている。
孟には日本との密接な交流があった。東日本大震災が起きたとき、彼女はすぐに日本に向かった。飛行機には彼女ともう1人しかしなかった。そのことを知っているある日本の女性から手紙をいただいた。
ファーウェイの技術と製品は日本に学ぶことから生まれた
ファーウェイでは残業する社員向けに毎日午後8時半に、フルーツやヨーグルトなどの軽食が無料で配られる。
—— ファーウェイの技術力は世界でトップだと思うが、新しいサービス、新しい価値を作る時期に来ているのではないか。5G時代には、モノをつくる通信設備の製造会社にとどまらず、人々の生活をどう変えるかという新しい価値の提供が必要では?
一番大事なのはお客さま志向だと思う。中国には安いものがあるが、それでもみんなが日本製品を買うのは、品質が素晴らしいからだ。日本にはお客さま志向がある。成長スピードや既存のマーケットに対する考え方も必要だが、それは一番ではない。一番大切なのは顧客の満足だ。
私たちの生産体制はトヨタを退職したエンジニアの方などから学び、品質管理制度にも日本のものを取り入れている。
日本に学ぶ姿勢を続けた結果、我々の5Gの基地局を買わざるを得ないような品質の製品が作れた。性能、出力を見ると、4Gの20倍に達するにも関わらず、体積は3分の1あるいは4分の1に、重さは20キロ、消費電力は10分の1にまで小さくすることができた。
これだけ小さくできれば、設置するために鉄塔を新しく建てる必要もない。ヨーロッパのように人口が密集する古い街並みに鉄塔なんて作れない。でもファーウェイの基地局ならば、すでにあるポールや壁に簡単に取り付けられる。
20年経っても錆(さび)が出ない材料も研究してきた。極端な話、5Gの基地局を下水道に入れることもできる。
エジプト・カイロの中心街。よく見ると、女優のスカーレット・ヨハンソンを起用したファーウェイの巨大広告が。ファーウェイのアフリカでの知名度は相当高い。
このような進化にはまさに人々の要望がある。中国やアフリカのような広大な土地なら鉄塔を作れるが、クレーンで吊り上げなければならないし、お金もかかる。ところが我々の製品なら、ヨーロッパだと設置費用が1万ユーロも安くなり、メンテナンスも簡単になる。となると、ヨーロッパの人々は買わざるを得ない。
アメリカは場所も広大でお金もある。そうした地域では少し遅れたモデルの製品を買いたいという考えも理解できる。
日本も人口が密集し、狭苦しい町並みに鉄塔を建設するには向いていない。小さい基地局、パフォーマンスがいいもの、さらには北海道から沖縄までさまざまな気候の土地で取り付けられる製品を使わない理由がない。
我々にとっては、お金がある人だけがお客さまではない。アフリカに送り込んでいる社員には中国にいるときの3倍の給料を払っている。あまり利益が出ない地域で、社員に多くの給料を支払ってでもサービスを展開できるのは、ファーウェイが上場企業ではないからだ。
我々は財務諸表よりも人々により良いサービスを提供していくことを重視している。エベレストのほとんどすべての基地局も我々が設置している。エベレストに住む人はいないが、基地局があることで登山者の命を救えるのだ。
これからも顧客の満足度を、我々は一番重視していく。
アメリカの制裁を受け、社内の団結が高まった
深センにある、最新のファーウェイのスマートフォン「P30」を生産する工場。世界中のすべての工場ラインは120メートルで統一されている。6年前は1ラインに86人の社員が必要だったが、現在は17人。28秒で1台のスマホを生産できる。こうした生産体制は日本の企業の方法から学んだという。
—— ファーウェイは常に危機にさらされている会社だが、今内部的には何が一番の課題か。
内部にはそれほど大きな危機はない。トランプ大統領の就任以前には危機があった。従業員が裕福になり、怠惰になっていたからだ。
アメリカの制裁によって、会社内部では団結が強まった。社員はより奮闘するようになり、奮闘できない人は会社を去るようになった。社員は18万人になっても、変わらず同じところを目指して進んでいる。
研究開発には毎年200億ドル以上投資をしている。これほど(通信技術という)一つの分野にしぼり込んで投資している会社はほとんどない。
上場企業は財務諸表が気になるため、どうしても保守的な選択になり、投資に多くを回せない。我々は未上場だから、財務諸表の数字よりも戦略の目標の実現に邁進できる。そういう意味での意味でのリスクはない。
—— ファーウェイは中国における最も成功した民間企業だが、ここまでどのような苦労があったのか。
なかなかお答えできない。苦しみしかなかったからだ。
民間企業が出合う苦しみはほとんど経験した。最大の苦しみは融資が受けられなかったことだ。とにかくお金がなかった。私個人の収入はすべて会社の未来に投資してきた。2000年になっても私の住む家はなく、奥さんが借りてくれた30平米の西日が差し込むエアコンもない部屋に住んでいた。
ただこうした苦しみを乗り越えるやり方はある。それは、法律を守ることだ。逆に言えば、レッドラインを踏み越えないことで我々の安全が確保される。
ラインを踏み越えない前提で、どうやって利益を確保するのか。それは頑張って働くしかない。みんなに少しでも多く働いてもらい、お客様により良い品質、高い価値を提供するのだ。
毎日8時間働いて週末は休む、では何も成し遂げられない
2019年3月、パリで開催されたファーウェイの新商品発表会。同社製スマートフォンの最新機種「P30」「P30 Pro」がリリースされた。
—— 現状、中国の民間企業には厳しい状況が続いているが、今後どのようは可能性があるか。
中米貿易摩擦は、中国の経済改革に刺激と加速を与えるだろう。それによって環境は良くなっていく、とあえて言いたい。
ファーウェイは法律を違反してない、アメリカからは証拠が一つも出てこない。アメリカは当初は簡単に潰せると思っていたかもしれない。
我々は欧米に進出すると共産主義から来た企業と思われる。だからこそ現地の法律を守らなければ生き残ることはできなかった。逆に中国に戻ると資本主義と言われる。双方向から睨まれているだけに、規範に乗った行動を取らないと自ら危ない橋を渡ることになる。
—— ファーウェイが世界中どこでも維持している経営思想とは何か。それは「奮闘者」という考えではないか(ファーウェイには奮闘するものは報われる、という基本の考え方がある)。
毎日8時間仕事をして週末は休む。こうした形で働くのは個人の選択だが、それで何かを成し遂げることができるのか。
本当に優れた製品を作る人は他の人より長く時間がかかってしまうかもしれない。それでも、そういう努力をする人たちを、我々は「奮闘者」と呼んでいる。
奮闘者になるかどうかは働いている人次第。何年も頑張って結果を出した人を奮闘者とし、会社の株を与え、その貢献に報いている(ファーウェイはすべての株を任氏と社員が持っている)。
この旧ソ連の戦闘機の写真はファーウェイ社内に大きく飾ってある。必ず生きて帰ってくるという決意の表れだろうか。
—— 任氏はイスラエルのラビン元首相の弟子だと語っているが、何を学んだか。
ラビン氏は各国の境界を決めて戦争の危機を回避した。長期的な視野があってこうしたことができたと思っている。
我々も他社に友好的に接しようとしてきた。競合他社を攻撃することはなく、技術的なコミュニケーションを強化し続けている。(5Gの)標準化という分野ではトップにいるが、その中でも競合他社に対して攻撃するようなことはしていない。
ラビン氏は土地と引き換えに平和を手に入れ、我々は市場と引き換えに平和を手に入れる。世界各国でラビン氏のような考え方ができれば、人類はうまくいく。
もう一人私が(尊敬すべき人物を)挙げるとしたら、ステーブ・ジョブズ。彼がもう少し長生きしたら、ITの分野にはどんな変化が生まれていたのだろうと考えてしまう。
最後に皆さんにお見せしたい写真がある。これは第2次世界大戦のときの旧ソビエト連邦の戦闘機イリューシンだ(といって任氏は、取材陣にボロボロになったイリューシンの写真のコピーを一人ひとりに渡した)。
ファーウェイも必ず山頂に登り詰める。そして山頂でアメリカと出会ったら、ハグするだろう。そして我々は必ず生きて帰ってくる。編集部より:初出時、「かつて(孟氏が)ある日本の女性と交流があり、今回も手紙をいただいたそうだ」とあるのは、「孟氏が震災時に日本を訪問したことを知っている日本人女性から手紙をいただいた」、また「娘の孟氏にはグローバルで数万人のファンがついているらしい」は「アメリカの大学に通う娘には〜」の間違いでした。訂正致します。 2019年5月20日18:00
(取材・撮影:浜田敬子)