[シカゴ 4日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は4日、FRBは世界的な貿易戦争などに起因するリスクに「適切に」対応すると述べた。利下げの可能性を排除しない姿勢を示した可能性がある。
パウエル議長は2日間の日程で始まった会議の冒頭講演で、前回の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、世界的な株式、債券市場の波乱要因となり、米国だけでなく世界的な経済成長に対するリスクとなっている通商問題が及ぼす影響をFRBは「緊密に注視」しているとし、「こうした問題がいつ、どのような形で解決するのかは分からないが、労働市場が堅調で、インフレ率が上下両方向にわれわれの目標の2%に近い水準で推移する(景気)拡大を維持するために、FRBはこれまで通り、適切に行動する」と述べた。
パウエル議長のこの日の講演には、FRBの金利水準は適切であるとの文言も、金利水準の変更には「忍耐強く」対処するとの文言も含まれなかった。一方で議長発言は、トランプ政権が主要な貿易相手国との通商問題を米経済成長に影響が出ない形で解決することに対する信頼感がFRB内で後退している可能性を示すものだった。
前日はセントルイス地区連銀のブラード総裁が、世界的な貿易を巡る緊張の高まりによる世界経済に対するリスク、および低調な米インフレを踏まえると、米利下げは「近く正当化」される可能性があるとの考えを表明。市場では、FRBが「忍耐強く」あるとの方針を翻し、利下げに踏み切るのではないかとの観測が高まっている。
FRBは昨年12月の利上げ以降は金利据え置きを決定。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現在は2.25─2.5%と、歴史的に見れば低い水準にあるが、FRB当局者はこの水準は景気を冷やさず過熱もさせない「中立」金利に近いとの認識を示している。
パウエル議長は、金利とインフレ率が低水準にある中、将来的に景気が下向けば、FRBが景気支援に向け金利を再びゼロ%に引き下げ、債券買い入れなど「非伝統的」な手段を利用せざるを得なくなると指摘。「こうしたことは再び起こる」とし、「(金融)危機時に利用された手段を『非伝統的』と呼ぶのをやめる時が来た可能性がある。こうした手段は将来的に何らかの形で必要になる公算があることをわれわれは承知している」と述べた。