[福岡市 9日 ロイター] – 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は9日、激しさを増す米中貿易摩擦を念頭に、G20各国が「リスクに対処し続け、さらなる行動をとる用意がある」と明記した共同声明を採択し、閉幕した。反保護主義に関する文案は見送った。
財務相会合でG20は、世界経済の現状について「足もとで安定化の兆しを示しており、総じて今年後半、2020年に向けて緩やかに上向く見通し」との認識を共有した。
その上で共同声明で「貿易と地政をめぐる緊張は増大してきた」と指摘し、「すべての政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する」ことも、併せて明記した。
政策手段のうち、財政政策では「機動的に実施し、成長に配慮すべきものとすべき」とした。金融政策に関しては「中銀のマンデートと整合的な形で、インフレが目標に向けた軌道を維持するか、目標付近で安定することを確保すべき」との考えを共有した。
声明では、国際協調を鮮明にするため「引き続き共同行動をとる」との姿勢も打ち出した。為替については「18年3月のコミットメントを再確認する」と明記。貿易赤字を問題視する米国を念頭に、貿易やサービスなど総合的な「経常収支」の不均衡是正をめざすことも確認した。
G20財務相会合はまた、巨大IT企業に対する新たな課税ルールについて、2020年の大枠合意を目指す作業計画を承認したほか、インフラ開発で中国から巨額の融資を受けた新興国を想定し、債務の透明性を図る重要性を再確認した。
<月末の米中協議が焦点に>
G20財務相会合で、下方リスクに協調して対処する方針を打ち出したことで、今後の焦点は28、29日に大阪で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に移る。
ムニューシン米財務長官は8日、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席がG20サミットに合わせて首脳会談を開くとの見通しを示した。9日の中国の易鋼・人民銀行総裁と会談後には「貿易問題で率直な議論を行なった。会談は建設的だった」と、ムニューシン氏自身のツイッターに投稿し、前向きなメッセージを出した。 ただ、月末のサミットまでは紆余曲折も予想され、貿易摩擦の出口は見えない。
関係筋によると、G20財務相会議の初日時点での声明案には「貿易摩擦の解消は急務」との記述もあったが、米国に配慮し、最終的に文案は削除された。米中貿易摩擦の激化が世界経済の成長を妨げるとの表現も見送られたが、「世界経済は多くの不確実性に苦しんでいる」(ドイツ連銀のワイトマン総裁)というのがG20各国の本音だ。
麻生太郎財務相は9日、G20財務相会合後の記者会見で、世界経済の現状について「貿易を巡る緊張が激化している」と表現した。米中摩擦が沈静化しなければ財政、金融両面で対応を迫られる可能性もある。
竹本能文、Francesco Canepa and Jan Strupczewski 編集:山口貴也