[2日 ロイター] – 欧州連合(EU)は2日、ブリュッセルで開いた首脳会議で、欧州中央銀行(ECB)総裁にフランス出身の国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、欧州委員長にドイツのフォンデアライエン国防相を起用することで合意した。欧州議会で承認されれば、いずれも初の女性トップとなる。
市場関係者のコメントは以下の通り。
<ソシエテ・ジェネラルの首席米国エコノミスト、スティーブン・ギャラガー氏> まず、ラガルド氏就任前にドラギECB総裁が当面政策決定を行うことを忘れてはならない。 ラガルド氏については、財務相に加え、IMF専務理事の経験があるほか、意見のまとめ役さらに話し合いに秀でた人材として知られる。政策運営を巡っては、ドラギ総裁が設定した軌道から大きく外れることはないだろう。他の候補者よりも、安全な人選と言える。
<モルガン・スタンレーのダニエル・アントヌッチ氏とジョアン・アルメイダ氏> 量的緩和第2弾は複数の要因が絡む可能性が高いが、ラガルド氏はこれまでハト派的な発言をしており、欧州中央銀行(ECB)次期総裁への起用はわれわれの確信を高める。ラガルド氏が引き継ぐのは、軟調な経済と目標を大幅に下回るインフレ率だ。
20カ国・地域(G20)首脳会議後の声明で、ラガルド氏は世界経済が困難な局面に遭遇しており、通商面が最大のリスク要因との認識を示した。また中央銀行に対し今後の経済指標に合わせた政策調整を継続するよう提言した。
われわれは、市場参加者がおそらくラガルド氏をハト派的な人物として位置付けるとみている。ラガルド氏は過去に、ドラギ総裁がユーロ維持のために「どんなことでも行う」と明言したことを称賛したほか、財政面にゆとりのある政府は景気後退に歯止めをかけるために財政政策を用いるべきとの主張を続けている。
<INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキ氏> 当初出てくる批判は明らかだ。中央銀行での経験はなく、経済学の分野で最高の学歴もない。政治家が再度ECBのトップに就任したとの批判も一部で出るだろう。 ただ、ジャンクロード・トリシェ前総裁は前任のウィム・ドイセンベルク氏と異なるECB総裁だったし、現職のマリオ・ドラギ氏もトリシェ氏とは異なる。
ラガルド氏はタカ派なのか、ハト派なのか。これまでのところ金融政策に関して目立った発言はないため、判断するのは不可能だ。金融政策の知的な立案者というよりは、むしろ調整役として手腕を発揮するだろう。時にECB当局者の間から内部サークルでの意思決定が多過ぎると批判も出ていたが、こうしたことが変わる可能性がある。
ラガルド氏の起用でECBはコミュニケーションの達人を総裁に迎えることになる。ただ、同氏の金融政策スタンスは現時点では誰にも分からない。