[ワシントン 10日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、下院金融サービス委員会で証言し、貿易摩擦や世界経済の減速による米景気拡大への影響に対処するため「必要に応じ行動する」と述べた。今月末に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)で約10年ぶりとなる利下げ実施に向けた下地を整えた格好だ。 

パウエル議長は、貿易摩擦を巡る不透明性が漂う中、「広範な」世界景気の弱含みが米経済見通しに影を落としていると指摘。先週発表された6月の米雇用統計は底堅い内容となったものの、欧州やアジアなど、他の主要国の経済指標の低調は続いており、引き続き米見通しへの重しになっているとの認識を示した。 

議長は「製造業、貿易、投資は総じて世界的に低調」とし、米中通商協議が再開したものの「不透明性の払拭には至っていない」と述べた。 

低水準にある米失業率がインフレを誘発する可能性があるかとの質問に対しては、全般的な物価上昇ペースは引き続き「抑制されており」、賃金も「小幅な」伸びにとどまっていると指摘。「労働市場が過熱していると判断する確証はない」と応じた。 

その後、議員の質問に答え、かつては逼迫した労働市場とインフレに強い関係があったが、それが「かすかな鼓動」というほどにまで弱まったと指摘「インフレが問題のある水準にならずに、想定よりもはるかに低い低失業率で景気が持続できることを学んだ」と語った。 

トランプ大統領から辞任を求められたら、「荷物をまとめてFRBを去るのか」との質問には「辞任しない。法は私の任期が4年であると明示しており、私は任期を全うするつもりだ」と、素っ気なく回答した。 

議長は、FRBの「基本シナリオ」に対する主要リスクとして、持続的に低水準にあるインフレ他の主要国の経済減速貿易摩擦を引き金とした企業による設備投資の減速を指摘。6月のFOMCでは、こうしたリスク要因が利下げを正当化する可能性があるとの見解が示された。 

「通商を巡る動向を受けて不透明性は増し企業や農家から貿易を巡る懸念が高まっている」とし、企業投資も最近の数カ月間で「著しく減速したようだ」と述べた。 

クレセット・キャピタル・マネジメントのジャック・アブリン最高投資責任者(CIO)は、「パウエル議長は7月の利下げに向け地合いを整えた」と述べた。 

パウエル議長の証言を受け、米株価は上昇。S&P総合500.SPXは節目となる3000ポイントを上抜ける場面もあった。 主要6通貨に対するドル指数.DXYは下落し、米2年債利回りUS2YT=RRも低下した。 

米金利先物市場では、今月のFOMCで50ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されるとの観測が強まった。 

パウエル議長は11日、上院銀行委員会でも証言する。