朝鮮日報日本語版

 青瓦台(韓国大統領府)は16日、日本が要求した「第三国仲裁委員会」の設置について、受け入れられないとする立場を公式に表明した。日本が回答期限として設定した18日を待たず、既存の方針を明確にした。青瓦台はまた、韓日企業が創設した基金で慰謝料を支払う「1プラス1基金」構想について、「日本側が受け入れられるならば、検討可能だ」と述べるにとどまった。「1プラス1基金」構想は韓国政府が提示した唯一の「外交的解決策」だが、それさえも「検討」レベルに格下げした格好だ。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は前日、「外交的解決の場に立ち返るべきだ」として交渉を直接提案した。それにもかかわらず、日本の菅義偉官房長官が「指摘はまったくあたらない」と述べ、文大統領を批判したことから、青瓦台が態度を硬化させたとみられる。

 文大統領は前日青瓦台の首席秘書官、補佐官との会合で、「我々が提示した案が唯一の解決策だとは主張していない。国民と被害者の共感が得られる合理的な方策を共に話し合いたい」と発言していた。これまで文大統領は徴用工賠償判決について、「司法機関の判決に政府は関与できない」とする原則論的な立場を示してきた。それだけに、文大統領が「合理的な方策」に言及したことを巡り、与党内からも「日本の報復措置が長期化する兆しが見えることを受け、青瓦台が『外交的対話』の余地を残した」との見方が出ていた。

 青瓦台幹部はそうした見方について、「強制徴用の問題は『三権分立』の問題だ」とした上で、「司法機関が判断したことを行政府が覆すことはできないという(青瓦台の)立場に変わりはない」と述べた。1時間後、青瓦台幹部は再び記者説明を行い、「日本の第三国仲裁委員会案は受け入れ不可能だ。基本的に現在(日本の)輸出規制の状況は何も変わっていない」と発言した。与党関係者は「日本が態度を変えるどころか、閣僚を通じ文大統領を直接攻撃したことから、強硬姿勢で応じたものだ」と説明した。

 青瓦台は韓国政府と韓日企業が共同で基金を創設し、徴用被害者に慰謝料を支払う「2プラス1」案についても、検討は行わないとした。青瓦台幹部は「(強制徴用)被害者が合意した方策以外は認められないからだ」とし、「被害者中心主義」に再び言及した。これまでの立場に逆戻りしたとの指摘が聞かれる。

 同幹部は「被害者らが同意できる方策を探るのか」との質問に対し、「あるならば」とだけ答えた。しかし、韓国政府は徴用被害者と追加的な接触は行わない方針とされる。このため、「被害者中心主義」を強調する政府が実質的な努力を行わないままで事態解決を望むのは矛盾だとする指摘も出ている。

■青瓦台、方策のほとんどに否定的
 青瓦台が第三国仲裁委員会の受け入れは不可能だとの立場を示したことを受け、日本は次の段階として予告した国際司法裁判所(ICJ)への提訴というカードを切るとみられる。ホワイト国除外など追加的な報復措置も予想される状況だ。ICJ提訴についても、青瓦台は「受け入れない」との立場だ。与党の一部から示されていた特別法制定案も受け入れない流れとなっている。

韓日両国の産業閣僚もソーシャルメディアで真っ向から衝突した。韓国産業通商資源部(省に相当)の成允模(ソン・ユンモ)長官は「日本側が具体的な根拠を示すことなく、韓国の輸出規制の問題点を示唆する発言を繰り返しているため、韓国政府は国連安保理の専門家らによる国際機関の共同調査を要求した」と発言した。これは日本の世耕弘成経済産業相はツイッターで、日本の輸出規制措置は徴用工判決への報復ではなく、「輸出管理」だとの趣旨の主張を行ったことに反発したものだ。

 一方、韓国与党では李洛淵(イ・ナギョン)首相の「対日特使論」が一部から浮上している。民主党の薛勲(ソル・フン)最高委員は「李首相が韓国の人物で日本を最も理解していることは間違いない。文大統領は適切な報告を受けていると思う」と述べた。しかし、青瓦台関係者は「日本がこんな形で出てきている状況で特使を送ることなどできない」と突っぱねた。

 青瓦台は日本との直接交渉ではなく、米国の仲裁などを通じた長期戦に備えようとしている。与党関係者は「日本の報復は北東アジア安全保障と経済協力の枠組み自体を変えようとする安倍政権の計画の一環で実行されているとみている。徴用工の問題で交渉を再開したところで解決できる問題ではないとみられる」と語った。