[ワシントン 17日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は17日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済が過去数週間、引き続き「緩やか」に拡大したほか、貿易摩擦による影響にかかわらず消費支出は続き、全般的な見通しも「おおむね明るい」との認識を示した。
雇用は拡大が続いた。ベージュブックは「労働市場は引き締まった状態が続き、全国的に雇用主は適切な人材を集めることに苦戦している」と指摘。
また「通商政策を巡る先行き不透明感によるマイナスの影響に関しては不安が広がっているものの、向こう数カ月間の見通しはおおむね明るく、緩やかな成長が続くとみられている」とした。
FRBが30─31日の会合で利下げを決定するとみられる中、ベージュブックは米経済がおおむね堅調であることを示した。経済の底堅さが明白であることから、一部のFRB当局者は利下げが必要かどうかを再検討している。
ただ報告は、FRBがなぜ利下げに踏み切る可能性があるのかを詳細部分で示唆。企業はサプライチェーンや関税、その他の問題に急いで対応を進めており、世界経済減速とトランプ政権の政策から生じる通商関連の問題が米経済の底堅さに疑念を抱く主因になっている。
ダラス地区では、調査対象の360企業のうち28%が、最近の関税によって「マイナスの影響を受けた」と回答。プラスの影響があったとの回答は5%にとどまった。
輸送企業が弱含み始めているほか、通商問題が製造業の重しとなっているという。トランプ政権が導入した関税を受けて、中国から輸入した部品を使った最終的な生産工程を米国以外に移す企業が出る中で、解雇も見られた。
ボストン地区では、ある電子部品メーカーが組み立て工程をドイツに移した。企業は「大半の部品が中国から輸入したものであるため、工程をドイツに移すことで関税を回避できる」と説明した。
また、クリーブランド地区は「貿易摩擦や顧客の在庫積み上がり、世界経済の減速の影響で製造業の低迷は続いた。貨物運送業者は需要がやや減ったと報告。通常夏は好調な時期で、企業は将来を不安視している」とした。
特定の技術を有する従業員の就労ビザを「取得もしくは更新することが難しい」との声も上がった。
今回のベージュブックは、サンフランシスコ連銀が7月8日までに入手した情報に基づいてまとめた。この期間には、トランプ大統領がメキシコへ関税を課すと主張した時期やその後に発動を中止した時期、その他の貿易摩擦が繰り広げられた時期を含んでいる。