[フランクフルト 22日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)が22日に公表した7月の理事会の議事要旨で、各種経済指標が一段と軟調となる中、ユーロ圏経済の浮揚に向け、利下げや資産買い入れなどを含む複数の措置を組み合わせて実施する必要があるとの見方が示されていたことが分かった。 

ECBは7月25日に開いた理事会で主要政策金利の据え置きを決定すると同時に、追加利下げや資産購入の再開を検討する方針を表明した。 

ユーロ圏の成長とインフレが軟調となる中、ドラギECB総裁は一段の刺激策を9月にも発表する可能性があると示唆。7月の理事会以降も経済指標は思わしくないため、ECBが一段の景気刺激策を発表する観測は高まっている。 

議事要旨では景気浮揚に向け、利下げ資産買い入れ金利ガイダンス変更のほか、マイナス金利政策による銀行への負の影響の軽減策などの措置の組み合わせを検討していることが判明。「さまざまな選択肢を1つのパッケージとして検討する必要があるとの考えが示された」とし、「例えば利下げと資産買い入れといった複数の措置を組み合わせて実施する方が、それぞれの措置を1つずつ実施するより効果的であることがこれまでの経験から判明している」とした。 

ECBが検討する措置の1つとして、マイナス金利政策による銀行への影響を軽減する中銀預金金利の階層化があるが、議事要旨では一部からこうした措置による意図せぬ結果に警戒感が示されたことも判明。金利階層化を巡り理事会内に大きな見解の相違があることが分かった。 

このほか、ECBが2%に近いがこれを下回る水準としているインフレ目標の再定義についても意見が分かれたことが明らかになった。ドラギ総裁は7月の理事会後の記者会見で、2%という水準を上下両方向に拡大させ、この水準を上限としない案が検討されていることを明かしたが、こうした考えに一部から反対が出たことが判明。(上方と下方の両方向からの)シンメトリック(対称的)なものに関する議論は、インフレ目標の見直し、もしくはECBの政策戦略そのものに関する広範な議論の一環として実施される必要があるとの意見が示された。 

7月の理事会では、入手されるデータでECBが見通しを再度引き下げる必要がある可能性、および域外の問題でユーロ圏経済に影響が及ぶとの懸念が示されたことも判明。ただ問題の根源は世界的な通商問題や英国の欧州連合(EU)離脱のほか、中国の景気減速などユーロ圏外にあるとの認識も示された。 

議事要旨は「指標から第3・四半期の成長は一段と減速する可能性があることが示されており、今年下半期に予想される回復を巡る全般的な疑念が出ている」とし、「下方リスクは一段と拡大しており、こうした下方リスクが根強ければ、最終的には基調的な成長見通しの修正が必要になる可能性がある」とした。 

ECBは次回9月の理事会で少なくとも10ベーシスポイント(bp)の利下げを決定するとの見方が大勢。ただ金利の階層化を巡る決定は今回は見送られると予想されている。 

10月31日に任期が切れるドラギ総裁に残された理事会はあと2回。後任には国際通貨基金(IMF)専務理事を務めるクリスティーヌ・ラガルド氏が就任する。