[フランクフルト 29日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)の次期総裁に指名されたクリスティーヌ・ラガルド氏は、金融安定リスクが伴うものの、必要であればECBには利下げする余地があるという認識を示した。同時に、金融政策の運営方法を巡る広範な見直しの実施は正当化されるとの見解も示した。
同氏は欧州議会の経済委員会に宛てた書面回答で「ECBには手持ちの広範な政策手段があり、行動する備えが必要だ。ECBの政策金利が事実上の下限(ELB)に達したとは考えていないものの、低金利が銀行部門や金融の安定性全般に影響を及ぼすことは間違いない」と述べた。
ラガルド氏はドラギ現総裁の後任として11月1日に就任する見込み。ドラギ氏の路線をおおむね踏襲するとみられている。
ラガルド氏はこのほか、金融政策の限界についても言及。「ECBは数多くの構造的な課題に直面しており、政策に対する信頼感を維持するために、ECBにできることとできないことに対する観測を制御する必要がある」とし、「金融政策は景気サイクルの安定化には効果があるが、国の長期的な潜在成長力を押し上げることはできない」と述べた。
ただこうした中でも、ECBが現在取っている極めて緩和的な政策スタンスは「当面」必要になるとの考えを示した。
また、世界的な金融危機が発生した2008年以降、大きな変化が見られたことから、ECBが戦略の広範な見直しを実施することが適切になるとも指摘。「前回の戦略見直しが実施された03年からかなり長い年月が経過しているため、マクロ経済環境やインフレ情勢の変化など、金融危機から学んだことを反映させる価値はある」と述べた。
このほか、英国の欧州連合(EU)離脱により金融市場のボラティリティーが高まる可能性があるとし、離脱を巡るリスクについて警告した。
ユーロ圏経済の成長が減速し、インフレが根強く目標を下回る中、ECBは次回9月12日の理事会で新たな緩和措置を決定するとみられている。すでにマイナス圏にある中銀預金金利の引き下げのほか、資産買い入れ策の再開などを発表する可能性がある。