[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国政府が再び国有企業を増やそうとしている。新たな推計によると国有企業は既に国内総生産(GDP)の4分の1程度を占めているが、この比率がさらに拡大する兆しがある。国有企業が担うのは、景気減速を和らげるという重い任務だ。 

中国の国有企業は「国のサービス」を行うとされ、とりわけ困難な時期にその役割が期待される。中小企業向けの低利融資を増やしたり、人民元相場を押し上げたり、赤字覚悟で天然ガスを安く売ったり、コスト回収の見込みが立たないのに高額な次世代通信5G関連機器を購入したりする。地方政府の関連企業は、資金難に陥った民間企業への投資も行う。 

こうした国有企業がどれほど大きな役割を担っているのか、正確に把握するのは難しい。世界銀行が先月示した推計では、GDPの23─28%雇用の6分の1が国有企業に由来する。しかし、国有企業の半分近くが民間企業として登録されているとする研究結果もあるため、推計は当てにならない。 

いずれにせよ、国有企業の存在感が高まっているのは確かだ。格付け会社フィッチによると、2018年初め以来、上場企業による政府系企業への株式割り当ては100件を超えた。また銀行貸し出しに占める国有企業向けの比率は近年、急上昇している。 

国有企業の関与が増えたのは、これが初めてではない。中国株が暴落した2015年には、「国家チーム」が株価押し上げのために介入した。これにより多くの民間企業で中国政府が筆頭株主になった。結果として国有資産が17%も増えたため、財政省が状況を説明する事態となった。 

この一件は、中国の民間・国有セクター間の境界の曖昧さを物語っている。民間企業が一夜にして国有企業に変わり得るし、逆もまた真だ。経済安定化装置としての国有企業の役割には代償も伴う。 

例えば国有企業である中国銀行(601988.SS)、中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)(0857.HK)(601857.SS)、中国移動(チャイナ・モバイル)(0941.HK)の株価は10年前より遥かに安くなっている。この間、上海と香港の主要株価指数は約25%上昇している。 

ピンチの時に国有企業が招集されるのは仕方ないとしても、株主が国のサービスにつきあわされる義理はない。 

●背景となるニュース 

*ロイターは、トレーダー2人の話として、複数の中国国有大手銀行が22日のフォワード市場でドルの流動性を受け取り、国内スポット市場でドルを売って、人民元を下支えしていると報道。 

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。