- CLOやレバレッジドローンの保有残高を聞き取り調査、リスク検証
- 合同調査結果は金融安定理事会に提供の可能性も-関係者
日本銀行と金融庁は、日本の金融機関によるローン担保証券(CLO)などの海外クレジット商品に対する投資の全体像を把握するため、共同で調査に乗り出す。事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。
具体的には、銀行や保険会社に対し、CLOやその裏付け資産にもなるレバレッジドローン(高リスクローン)の保有残高などを聞き取り調査する方針。その結果を基に、日本の金融機関が潜在的にどの程度のリスクにさらされているかを検証する。
マイナス金利政策による収益低下を背景に、一部の国内金融機関は海外投資に活路を見いだしている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の広報担当者はブルームバーグの取材に対し、低金利環境の下、CLOは相対的に魅力的な投資対象だとの考えを示していた。
世界経済の減速傾向が強まる中、米中貿易戦争や英国の欧州連合離脱(ブレグジット)などの火種も依然くすぶる。日本の当局としても、金融システムにストレスがかかった場合に備え、事前にリスクを点検しておく必要があるという考えで一致した。
イングランド銀行(英中央銀行)の推計によると、2017年の世界のCLO発行残高7500億ドル(約80兆2500億円)のうち、約1割を邦銀勢が保有。同市場での日本の金融機関の存在感は大きい。関係者らは、多くの国内金融機関がCLOなど証券化商品の保有残高を公表しているが、独自基準に基づいたものだったとし、今回、統一した手法で調査することにより、より正確なデータが把握できると期待する。
また、関係者のうち数人によると、日銀は今回の調査結果の一部を何らかの形で公表することを検討しているという。関係者の1人は、調査結果を主要24カ国・地域の金融当局者などで構成する金融安定理事会(FSB)へ提供するとの見通しを示した。FSBも独自にCLO市場のリスクを調査している。
日銀金融機構局の河西慎課長は「マクロ、ミクロの両面で今後金融庁との連携をさらに深めていく重要性を感じている」とコメント。「日本当局として実態に基づいたきめ細かい情報発信を行い、日本の金融システムに対する正しい認識の共有を図っていくことが重要」との考えを示した。金融庁広報担当の和田良隆氏はコメントを控えた。
金融庁は昨年末以降の米レバレッジドローン市場の過熱を背景に、国内金融機関のCLO投資への監視を強化。特に残高の大きかった農林中央金庫、ゆうちょ銀行、MUFGの資産管理状況を注視している。一方の日銀も、19年度の金融機関に対する考査方針にCLO保有リスクの点検を盛り込んだ。